「踏む」というのは、実は意外に難しい行為なんです。
体幹を鍛えましても、踏めませんと体幹の筋力がアップしただけになってしまう。
いえ、そればかりか、
体が硬くなって動きの質を落としてしまいかねないんです。
「体が硬くなって」と言いますのは、柔軟性を上げていても、です。
体幹の柔軟性を上げていましても、それはあくまで体幹単体での動きですから、
全身の連動性とは別物なんです。
どういうことかと言いますと、
体幹を曲げたり反ったりなど、動かせば動く。
けれど、それは体全体のエネルギーの流れの中で必然的に起こるものではなく、
形を変化させているだけ。
ということなんです。
踏めないがために、足元からのエネルギーが上に伝わらない。
逆に、上のエネルギーを下に伝えられない。
つまり、上半身と下半身が常に分断されている。
「お腹で踏む」
という言葉を聞かれたことはありますでしょうか?
踏むと言いますと、普通は脚で踏むと考えると思うんですね。
脚に力を入れると。
けれど、脚は出来るだけ力を抜いていたいんです。
脚は、力が通るところ。
力を入れてしまいますと、止まってしまいます。
そういう意味では、踏む際に、脚の力を抜くようにしますと、
お腹が働き始めるかと思います。
こうして、お腹で踏む感覚が分かっくるといいですよね。
ただ、この後に別れ道が生じるようでして、
踏んでるつもりなのに、上半身にエネルギーが上がってこない人がいるんです。
それは実際には踏めていないのですけど、
当人としては、足の力は抜いて踏もうとしているだけに、
如何ともしようがない感じではあるのですけど・・・
こういう人に、いえますとことは、
踏むという下向きのエネルギーを作る前に、
上に引き上げることを最初に意識した方が、
いくらかは良いのかな?なんですね。
と言いますのは、
下向きのエネルギーを生じさせるには、
逆の上向きのエネルギーが必要だからです。
逆向きがありませんと、ただ流れてしまいますでしょ?
少し、お話それますけれど、
バレエなどでは「引き上げ」という名の、上向きのエネルギーを
すごく意識させることはご存知でしょうか?
けれど、これ、本当は踏むという下向きのエネルギーが重要でして、
踏むことで上が軽く、そして伸びやかになるんです。
で、これが出来ないがために、
見かけ上の上向きを意識させるのでしょうけれど、
上向きにしてしまいますと、
下とのエネルギーの通りが無くなるものですから、
下半身は下半身、上半身は上半身として扱わざるを得ない、
ということになります。
といった感じでして、
踏むという下向きのエネルギーを作る前に、
上に引き上げることを最初に意識した方が、
いくらかは良いのかな?と言いますのは、
あくまで、下向きのエネルギーを作るためであって、
ただ単に上向きを意識してしまいますと、
むしろ上半身を緊張させ、結局踏めませんますから、
注意が必要ということです。
いずれにしましても、
踏むと言いますのは、脚で行なうことではなく、
全身で行なうこと。
そして、全身で行なうと言いますのも、
自然に全身に変化が現れるということであって、
意識的に使うわけではない。
踏むという、一見誰でも出来そうなことが、
意外に難しいんだなと思えてきますと、
今行なっている運動に対する意識が変わってくるかと思います。
「踏む」
取り組んでみてはどうでしょうか?
アートマイム公演 2月8日(火) 公演写真 次回は8月22日(月)