こんな質問を受けました。
「身体や意識の次元が変わった境目は、はっきり分かったんですか?」
私の答えは
「気がついていませんでした。」
前回の記事でお話しましたように、年老いて動けなくなっても表現できる身体を目指していたわけです。
また、演技に関しましても、師匠テリーさんに言われたように、フリの演技にはならないようにしていったんですね。
で、徐々に良くなっているのは、もちろん感じていましたけれど、明確に「きたー!」みたいなものを感じた覚えはないんです。
ですから、ある時、こんなことを言われて戸惑ったことがあるんです。
「他の人と一緒に舞台に立ったら浮いちゃうでしょうね。そんなに高い集中力の人、いませんよ。」
私としては、舞台に立つ人は誰でもみんな集中していると思っていたので、
この人が何を言っているのか、今では理解できますけれど、当時はさっぱり分からなかったんです。
おそらく、こういった意識・集中力に関しては、今のようにいつでも意識的に入りっぱなしになれるまでに、入れたり入れていなかったりという状態があったのだと思います。
しかも、そのムラに対して無自覚といいますか、はっきり認識できていなかったのでしょうね。
動きに関してましては、とにかく試行錯誤でしたから、それこそ徐々に変わっていったのだと思います。なので、自覚が生じないわけです。
(もちろん、その時々で、これは!と思うようなことは何度もありましたよ。今でもありますし。)
といったようにですね、私自身は、何かそんな劇的に自分が良くなるみたいなことを感じたことはなかったんです。
ただ、指導に関しましては、長年の指導によって、コツといいますか、重要なツボみたいなものが分かってきていますから、生徒さんが自分自身に対して劇的に「あ!!」と思うように導くことは可能になっています。
ありますけれど、やはりそれがいつでも自在にとなるのは、簡単ではありませんね。
その人自身の稽古にかかります。
当たり前ではありますけれど、上手くいった!とか、出来るようになった!とか、そういったものと、身についているという状態は、全くの別物です。
そして、身体や意識の次元が違う状態でいるといいますのは、結局のところ、自分の肉体と意識・内面との間に乖離がない状態を、どれだけ維持できるか?だと思うんです。
乖離がない、あるいは乖離が小さい状態を一時的に体験することは、レッスンで可能なわけですけれど、それを維持し続けられるようになるには、それ相応の稽古が必要。
これは、分野に限らず、アマチュアとプロの差みたいなものかと思います。
アマチュアはプロのように良い時もあるかもしれないけれど、悪い時もあり、安定しないものですよね。
(プロにはプロのレベルでの不安定さはありますよ。)
私自身がそういった不安定さを乗り越えて、今に至っているように、生粋の天才でない限りは、誰もが辿る道なのだと思います。
身体や意識の次元が違う状態を身につける稽古というのは、技術的に何かが出来る出来ないといったものとは異なりますから、自分がどの程度上達しているのか認識しづらい面があります。
冒頭の私の答えのように。私が気がついていなかったように。
けれど、それでも、身体や意識の次元が違う状態を身につける稽古を続けていれば、より繊細な稽古にしていれば、着実に変わっています。
本人の自覚がなくとも、上達しているものです。
自分から目を逸らさず、自分を信じて。
次回公演は12月13日(金) 大型企画です!!