オーガニック・アートマイムJIDAI の「身体」「表現」考

オーガニックな身体の使い方、表現についてのいろいろ。時々、甘いもの。

人間の設計図 人間の再構築 

私はもともと、運動神経が悪いだけでなく、軽い側湾とともにひどいO脚だったり、(今思うと)学生の頃は足首が浮腫んでいたりと、全く恵まれていない身体だったんです。

(こちらでも過去にお話をしたことがありますね。)

 

にもかかわらず、こうして身体の使い方の専門家として著書4冊・DVD3本を世に送り出している。。。過去の自分が知ったら、ほんとビックリすると思います。

 

で、これ、どうしてなのか? 

 

やはり、アートマイムのおかげ。

アートマイムをやっていなければ、絶対にあり得ない。そう思うんです。

 

では、アートマイムの教えには、そんなに細かな身体の使い方があるのか?と言いますと、そんなことは全くありません。

私が今、指導しているような身体の使い方は、決して習ったものではないんです。

ですから、同じ時期に同じ師匠であるテリーさんから学んでいた人は、何人かいますけど、誰も知らない内容です。

 

だからといって、私が勝手なことをしているというのではなく、むしろ、他の誰もアートマイムを身につけられていない。

つまり、直接の指導内容には入っていなかったけれど、言外に含まれている内容、あるいはテリーさんの見せてくれる動きが、教えてくれた。そこを掴めたかどうか?なんです。

 

で、なぜ掴めたか?

これが非常に重要なポイントだと思うんです。

 

私のセンスが良かったからではありません。身体能力が低い上に、頭も特に良いわけでもないのですから、他の一緒に学んでいた人たちより優れたところなんて、何もありません。

 

他の人が掴めず、私が掴めた理由、それは、

 

アートマイムが何であるのか?を深く理解出来ていたから。

 

これに尽きると思います。

 

 

 

アートマイムとは、人間を再構築するものなんです。この世界の在り方を再構築するものなんです。

 

どういうことか?

 

 

アートマイム、一般的にはパントマイムという理解で大丈夫なんですけど、舞台上での演劇的表現になりまして、セリフ・言葉はもちろん、道具類も何もないまっさらな空間に身ひとつで行う演劇的表現。

 

そんなアートマイムでは、まず「自分という存在がない」という状態から始まります。「世界もない」という状態が前提になります。

 

大事なのは、これを、そういうイメージ・考え方という抽象的なことではなく、具体化していることなんです。

 

どう具体化しているか?

 

自分の身体を、一旦、人形にします。人形のように動くパントマイムということではありませんよ。

人間の形をした物体が、どう動くと人間らしく見えるのか?

それを考え、実行する。

本当の人形劇や、アニメでは普通にやっていることですね。それを、まぁ生身の自分の身体でやるわけです。

私たちは紛れもなく人間なものですから、黙っていても人間の動きが出来ると思ってしまうんですけれど、実はそんなことはないんです。

 

で、それは動きだけではなく、呼吸そのものも同じように考えるんです。

呼吸するとはどういうことか?

私たちの身体がもし動かずに、呼吸もしていなければ、ただの物体ですよね?まずは、呼吸してくれないと生き物になりません。普段の私たちは無意識で呼吸をしてしまっていますから、呼吸をしていない物体に戻っての自分という存在・生命を考えはしません。呼吸していなければ、そもそも自分は存在しません。生命ではありませんものね。

ですから、これも先の動きのお話と同じように、ただの物体について考えるわけです。

 

単なる物体が生きている状態になるとは、その物体全体が呼吸の動き、つまり膨らんで縮んでをしてくれること。

私たちは肺だけで呼吸しているわけではない。全身が呼吸に伴って変化しています。そこに意識的になるわけです。

 

 

さらに、自分の意思が生まれるということも、意識的に身体を使って行うんです。

呼吸して生き物らしく動くだけでは、まだ人間ではありません。「私」という意思が必要です。それも、単に脳内だけの意識といった抽象的なものではなく、身体と共にある「私」です。

ですから、「身体全体と意識の一体化」がイコール「私」になります。

 

アートマイムでは、舞台上にいる間は決して、この「私」という身体状態を失ってはいけないんです。普段の「私」とは違う「私」です。舞台から降りた時、初めて普段の「私」に戻れるんです。

普段の「私」とは、社会化された「私」です。アートマイムの舞台上での「私」とは、社会化されていない普遍的な意味での人間です。

 

こうして、初めて人間が誕生し、次にこの人間の周りに世界が生じるわけですけれど、世界とは、常にこの人間である「私」との関係が生まれることで、存在できるものです。言い方を変えますと、「私」と無関係の世界は存在しないのと同じ

 

アートマイムの舞台では、最初にお話をしましたように、物理的に本当に何もありません。全ては「私」と関係あるものとして、生み出す必要があるんです。

そして、これも(頭の中の)イメージではなく、身体的な反応として生み出します。

(初めから「私」の外に何かがあるわけではなく、常に生み出す必要があるということは、非常に大きな意味を持ちます。)

 

 

さらに、感情。

自分の外部に生み出した世界ですが、自分が生み出したにもかかわらず、まるで自分から切り離されたものとして、その世界との関係で、感情が生まれます。いえ、世界との関係によって感情が生み出されたようにするんです。

 

言い換えますと、世界に意味はありません。意味付けするのは、「私」なんです。

「私」にとって、その世界がどんな意味を持つか?があるだけでして、汚いものや美しいものがあるわけではなく、「私」が汚いと感じたか?美しいと感じたか?でしかありません。また、それに対して、嫌悪を感じるか?好意を感じるか?も、「私」次第というわけです。

 

そして、感情というのは、頭の中で、あるいは抽象的に心の中で生じるものではなく、あくまで身体的反応であるということを、身をもって感じ、生み出すのです。

演じるといいますと、悲しい、あるいは嬉しいと思い込もうとしたりしがち。あるいは悲しい人や嬉しそうにしている人を演じがちですが、それらは嘘です。悲しいという身体の状態、エネルギーの流れ方があり、それを生み出すことが重要。生み出せますと、悲しいという感情が生まれる。

(この実践を「エモーショナル・ボディワーク」と称して指導しているのです。これも私のオリジナルで、このような教えを受けたわけではありません。けれど、この実践をしていることは間違いありません。)

 

 

とまぁ、長々と書いてきましたけけれど、「アートマイムとは、人間を再構築する。この世界の在り方を再構築する」とは、概ねこんな感じのことなんです。

 

こんなアートマイムに出会ったおかげで、冒頭のようなことになったわけです。

逆にいいますと、アートマイムの習得のために、必要に駆られて起きたことでもあるわけです。

 

アートマイムは表現としては特殊な身体の使い方をすることもありますけれど、土台は全てに共通する普遍的な身体の使い方になります。私がしばしば話題にする和や西洋もない。どちらもあるんです。「人間」が前提ですから。

 

ということで、私の扱っている身体の使い方といいますのは、一見、アートマイムという一風変わった身体表現のための技法でありながら、分野問わず、汎用性の高いものになるんです。

 

と、身勝手に自分だけで思い込んでいるわけはないということで・・・

 

野口整体の施術家の方で、以前よくワークショップを受講下さっていた方が、私が1冊目の著書出版の際に、こんな言葉で(恐れ多いのですが、ありがたいことです。)紹介下さいました。

 

「神様から密かに人間の設計図を見せてもらったのでは? と思ってしまったほど、身体のことを解き明かして・・・」

 

どういった視点からでも、興味を持ってもらえたら嬉しいなと思います。

 

 

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特殊な身体

良くも悪くも特殊な身体の使い方をしているなら、ものの見方・考え方も特殊。

 

ものの見方・考え方は動きに現れます。

逆に言いますと、その人の動き・身体の使い方は、その人のものの見方・考え方を目に見える形にしたもの、ということ。

 

身体の使い方が良い悪いということとは、またちょっと違う指標です。

 

身体の使い方の良し悪しといいますのは、簡単には言えないんです。

 

例えば、「走る」としまして、100Mなどの短距離とマラソンのような長距離ですと、良し悪しの判断基準が違うだろうというのは、誰でも想像がつくかと思います。

とはいえ、やはり「走る」という点で、共通しているところはありますから、全ての判断基準が違うわけではないということも、想像つくかと思います。

 

 

ですから、今回のお話では、身体の使い方が良い悪いということとは、またちょっと違う指標として、「特殊」です。

 

 

 

良くも悪くも特殊な身体の使い方。

 

例えば、武術的な身体の使い方は、いわゆる一般的な人からすれば特殊です。習得しようとしても、なかなか習得できないとすれば、それは、身体能力の問題よりも、ものの見方・考え方の問題が大きいんです。

特殊なものの見方・考え方を出来るようになる必要があるということ。

 

実際、古武術的なものを学びに行く人の多くは、身体の使い方そのものというよりも、ものの見方・考え方に惹かれていたりします。女性が多いのも分かりますね。

古武術的な身体の使い方の学びを通して、ものの見方・考え方を変えよう、学ぼうとしているわけです。

 

ヨガの人気も、ものの見方・考え方を変えてくれそうといったところは大きいかと思います。

 

でまた、走りのお話にしますと、短距離的な走りに向いているものの見方・考え方があり、長距離的な走りに向いているものの見方・考え方があるとなります。

 

良し悪しではありませんでしょ?

 

 

さて、良くも悪くも特殊な身体の使い方をしているなら、ものの見方・考え方も特殊だというお話。

 

生まれつきの器質的(物理的)な問題は置いておき、何か他の多くの人とは違う身体の使い方をしているようだなぁと思ったら、それは、ものの見方・考え方も違うと考えた方がいいんです。

 

で、身体の使い方が悪い方向に働いているのだとしたら、ものの見方・考え方も問題・トラブルが起きやすい可能性が高いということでもあります。

(身体の使い方が良ければ、問題・トラブルが起きないということではありませんよ。程度や質の問題です。)

 

問題なく平穏であれば、それは環境に恵まれている。周囲の人が理解してくれているということ。

 

例えば、筋肉を強めに使ってしまう身体の使い方の人と、筋力がいつも弱めになる人とでは、大雑把な話ではありますが、筋肉強めの人の方が弱めの人より、主張が強かったりします。弱めの人は自分を引っ込めがち。

ただ、一見筋肉弱めでも、芯が硬いと、表面的には自分を引っ込めるけれど、実は強情で融通が効かないところがあり、内に溜め込んでいたりします。

 

筋肉強めの人が多く集まると、主張のぶつかり合いになりますけれど、周囲が筋肉弱めの人ばかりであれば、いつも主張が簡単に通ります。あるいは、筋肉弱めの人に対して、イライラするかもしれません。

 

そんな感じです。

 

ですから、身体の使い方がどうも特殊で悪い方向に働いているという場合、そして改善しようとしてもなかなか改善しない場合、特殊なものの見方・考え方が相当に根強いのでは?と考えた方が良いんです。

 

人は、自分のものの見方・考え方が特殊だとは、なかなか思えないものです。思ったとしても、良いものであるとして、なぜ他の人は自分と同じようなものの見方・考え方をしないのか?となりがちです。

 

いずれにしましても、身体の使い方の特殊性を、生まれ持った身体の物理的な条件の問題に全て帰するような考え方をするのではなく、自分のものの見方・考え方の現れだと考える必要があるのです。

(ものの見方・考え方が顔つきを変えていくように、骨の位置や筋肉のつき方といった肉体も変えていきます。)

 

誰もが身体の使い方を良くする必要があるとは思いませんけれど、その特殊性がどこから来るのか?を見ることは、自分自身がどういう人間か?の理解につながります。

そして、その理解が、身体の使い方を変えていったりもします。

 

自分の特殊性とどう向き合うか?ですね。

 

 

 

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声帯を全体で鳴らす

通る声、響く声は、声を出さない人にも重要ですよと、ずっと言い続けているのですけど、

私自身の発声が、ここにきて一気に深まってしまいました。

 

非常に有用性の高い方法といいますか、発声エネルギーを覚醒させると言っても良いのでは?と思うような方法を見つけた感じなんです。

 

大袈裟?(笑)

 

元々の「声が大事ですよ」ですけれど、これは声を実際に出す出さないに関係なく、身体にエネルギーを通す上で欠かせない身体の内部感覚を養いましょうということを言っているんですね。

 

呼吸が大事とはよく耳にすると思うのですけど、声は呼吸と深く繋がっていますでしょ? 呼吸の質がどんなものか?なかなか自分では分かりづらいところを、発声を使いますと、呼吸の質を捉えやすくなるわけです。

 

 

ですから、全く声を発しない身体表現であるアートマイムなんですけど、学んでいきますと、知らず知らずのうちに声がよくなるはずなんです。

全身にエネルギーを通すことを学んでいるわけですから。

 

ただ、ただですね、やはり声帯のコントロールとなりますと、また別もの。

 

声帯のコントロールは、アートマイムではもちろん、一般的に身体の使い方や呼吸の質を上げようとする中では、全く関係ないことですものね。

 

アートマイムを学んで声が良くなるといいますのも、喉が深くまで開き、下腹がしっかりし、無駄な力が抜け、などなどといったことで自然と良くなるのであって、それなりに上限はあるんです。

 

そんなこともありまして、声帯のコントロールという要素が加わりますと、ある意味、一から取り組む必要があるわけです。

 

 

で、私はその声帯のコントロールスキルが、一般的な人より低かったものですから、遠吠えなどの声帯とあまり関係ない発声スキル(=身体エネルギー)の高さと、(歌では特に重要な)声帯スキルとのギャップが非常に大きかった、ということでして、ずっと声帯コントロールスキルの開発に取り組んできたんです。

 

そんな中で、分かったことに、2つ、重要なものがあります。

これは、声を使う人は本当に重要なことだと思います。

 

 

ひとつ目。

 

「共鳴腔を優先させてはいけない」

 

 

これは以前の私がそうだったんですけど、共鳴腔という、声帯(喉仏の中にあります)より上の、口の中や頭蓋骨の中の空間、ここを使えますと、音は非常に大きく鳴るがために、ここを優先させてしまうんですね。

軟口蓋を持ち上げるといったようなもの、聞いたことある方もいらっしゃると思いますけれど、ある意味、手っ取り早いんです。

 

手っ取り早いということは、実は肝心なことが出来ていなくても、かなり良い感じになれるわけです。

極端な言い方をしますと、小手先でかなり行けてしまう。そんな感じです。

 

 

そこで、重要なこと、ふたつ目。

 

「最優先は、声帯を全体で鳴らす」

 

 

これ、「全体で」という言い方が良いのか迷うところなんですけど、とにかく、声帯をきちんとしっかりと鳴らし切れるようにすることが重要ということなんです。

 

発声の際には、必ず声帯を使っているわけですから、誰でもそれなりには鳴っているんです。けれど、鳴らし切るのは難しくてですね、分かりやすい例では、高音を出そうとしますと大抵は喉を締め上げてしまいますでしょ? あれは声帯の鳴らし方を分かっていないからなんです。

 

 

私の場合、発話といいますか、言葉にしない発声の場合は良かったのですけど、言葉として発しようとしますと、声帯のコントロールが一気に難しくなってしまっていたんです。

 

そこで、声楽家であり独自のボイストレーニングのメソッドを開発している福田美樹子さん(以前、こちらで紹介しましたね)のレッスンを1セット分6回受けたんです。

 

そこから、今度はまた自分の方法を見つけるべく、いろいろ試行錯誤していきまして、ある方法に辿り着いた!

(全くのオリジナルで、福田美樹子さんのメソッドは何も入っていないので、福田美樹子さんのメソッドに興味のある方は、そちらを紹介しますよ~。

 

 

それは、ある特殊な発声をすることで、声帯を全体で鳴らすことが非常に容易になる。そのため、低音の響きは深く深くなり、高音でも喉が締め上がってしまうのでは?という心配が全く要らなくなり、柔らかな高音が可能となる。そんな方法。

とてもシンプルで、取り組みやすい方法

 

ちなみに特殊といいましても、調べてみますと、その発声法を取り入れているボイストレーナーもそれなりにいるようです。

ただ、それをどう利用するのか?の考え方、意味合いは、それぞれですね。

 

 

今、定期個人レッスンの受講者の中に、歌手活動をされている方がいまして、最初から発声のために受講を決めてくださったんですけど、この練習法の成果をとても喜んでくださっています。

 

小手先の発声技術ではなく、勝手に鳴りが良くなるので、即興では特に威力の発揮を感じているようです。

 

 

もちろん、いくらシンプルで取り組みやすい方法とはいいましても、段階的に発展させていくものでもありまして、難易度は上がってきます。

それでも、最初の段階のものを日々なんとなくでもやっていますと、身体開発に思わぬ展開が訪れたりするんですよね。

継続は大事。継続していきますと、次の段階に上がりやすくなりますから。

そんなことで、歌手活動をされている方には、今、その発展させたものに取り組んでもらっています。

 

ところで、「即興では特に威力発揮」ということですけれど、つまりこれは、身体に任せられるようになる発声方法だから

発声を頭で考えて小細工的に何かするというのではなく、身体が必要に応じて反応してくれるという練習法になっている、というわけです。

別の言い方をしますと、自分で自分(の対応力、潜在力)にびっくり!出来るようになっている。

 

 

さて、この発声法については、個人レッスンでしか伝えていないわけではなく、月1回開催の特別クラス「声からクラス」でも取り上げています。

それだけ、発声を重視しているということでもあります。

一般的なボイストレーニングからしますと、突飛な方法かもしれませんけれど、元々全身のエネルギーを通すことがメインであるJIDAIメソッドがベースなので、発想も方法も一般的でないのは仕方ないですね(笑)

楽で楽しくて、それでいて効果は非常に高い。そんなものを常に考えている中から生まれた方法です。

 

エネルギーを抽象的なものとしてではなく、身体や声という形で実感することに興味がある方には、良いのでは?と思っています。

 

 

 

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どうやったら出来るようになるのか? を教えてほしいと思いませんか?

踊りでも歌でも、楽器演奏でも、およそ身体を使ってするものは、全て同じだと思うのですけど、

教える側は、これこれをやってみて下さいであるとか、これこれを出来るようにしていきましょう、ですよね。

で、習う側は、それにトライする、繰り返し行う、となる。

 

そうやって、少しずつ難しいものを出来るようにしていくわけです。

 

けれど、その難しさですけれど、どの時点で、どんな内容で、習う側が難しさを感じるかは、分かりませんね。人それぞれ。

言われたものを、すぐに出来てしまうこともあれば、他の人が簡単に出来ているのに、自分だけ出来ないってこともありますね。

 

当人にとって難しいものの場合、

 

「どうやったら、それが出来るようになるのか? そこを教えて欲しい。」

 

と思うこともあるでしょう。

 

 

(「あるでしょう」としたのは、そういう思いをどの程度抱くかも、人それぞれだから。)

 

 

さて、これ、

教える側は、どこまで教えたらいいと思いますか?

逆に、

習う側は、どこまで教えてもらえるものだと思いますか?

 

 

武道系、和物で多い、教えないという指導。ひたすら師匠の真似をする、見て盗む系の学び。

質問すら許されない世界だったりします。

大変ですよね。

 

とは言いましても、初歩レベルからさまざまな要素を分解して丁寧に教えてくれるレッスンでも、やはり大変さはあります。

 

ですから、どんなものでも、どこまで教えるか? どこまで教えてもらえるものか? という問題はあるわけです。

 

 

いずれにしても、とにかく、習う側は、早く出来るようになりたいですよね?

 

 

では、例えば、踊りで、この振り付けを出来るようにしていきましょうであるとか、音楽で、ここのフレーズを出来るようにしていきましょう、などで、その動作が上手く出来ない場合、どうやったらそれが出来るようになるのか? そこを教えて欲しいと思っても、実は、その出来ない原因は、どこまでも遡れてしまうがために、教える側にとっても、習う側にとっても、厄介な問題になってしまうんです。

 

 

と言いますのは、一見その動作の難しさとは関係なさそうな、腕を上げる(肩の高さくらいでも)という動作が上手く出来ていないからかもしれないんです。呼吸に問題があるからかもしれない。視線の使い方に問題があるからかもしれない。

 

けれど、多くの動作練習は、それぞれに習得して欲しいポイントがあるんですね。

腕の上げ方の質が多少悪くても、そのポイントがおおむね出来るようになることが大事ということなんです。

つまり、どんな練習でも、目を瞑る点(ここでは腕の上げ方の質)が同時にあるということなんです。

 

目を瞑る点を全く作らないで練習をしてもらうとすると、それはまさに完璧、身体の使い方のスペシャリスト、どこをとっても隙がないという動作を目指すということになります。

超上級者の練習ですよね。

 

まずは、習得して欲しいポイントさえ上手くいけば良いわけです。

(極端な例では、質はどうでもよくて手順・順番さえ覚えればいいといったこともありますね。)

 

 

ところが、どうにもポイントを外してしまい上手く出来ない場合、今のたとえのように、腕を上げるという行為に問題があるからかもしれない、呼吸に問題があるからかもしれない、視線の使い方に問題があるからかもしれない、といったことを探る必要が出てきます。何が問題になっているのか、簡単には分からないことが多いんです。

 

大抵は全てに問題がある。

けれど、その全てを問題にし出すと、キリがない。今やろうとしている動作に対して、より強く影響している悪さ一点だけを探り出したいわけです。

 

今取り組んでいる動作が出来ないことに対して、どこまで遡れば良いのか?

そもそも、遡る必要があるのか?

単に慣れないだけで、もう少し取り組んだら上手くいくのではないか?

 

 

もし、遡って、腕の上げ方を改善しようとすると、腕の上げ方だけで多くの時間が必要となり、本来取り組んでいた動作練習にたどり着けないかもしれないんですよね。

 

しかも、腕の上げ方を改善する中で、もっと遡って、立ち方の問題が出てくるかもしれない。

そうやって、遡っていくと、一体、いつになったら本来取り組んでもらおうとしていた動作練習に入れるのか?

 

腕の上げ方にしても、立ち方にしても、どこかに目を瞑る点がないと、先に進めない。寝っ転がるところから始める必要が出てきて、いつまでも立ち上がる練習にすら入れないまま、一生を終えてしまう。

 

 

もちろん、こういったことをしていくことが、動きの質を上げていく際、非常に重要でして、その方面にあまり目を向けずにどんどん筋力アップしたりストレッチしたり、負荷の高いトレーニングをしていくことが、世の一般的な考え方になっているわけですが・・・

 

 

どこまで遡る必要があるのか? 

 

そこには、教える側の(解剖学、生理学、心理学などの)知識、(目の前の人を)見抜く力、(具体的な方法や言葉の選択などでの)引き出す力、(どこまで出来ていれば良いか?に基づいた)検証する力、などが必要になるでしょうし、

習う側のモチベーションが、どこまでの遡りまでついてこられるか?の問題があります。

 

ここには、遡らなくても、練習をやり込むことで突破出来るだろうという、選択肢もあるわけです。

 

さらに個人レッスンなのか?グループレッスンなのか?という、レッスン形式などの問題もあります。

 

いつまでに、どの程度、出来るようになる必要があるのか?といった問題もあります。

 

 

と、長くなりましたけれど、まだまだ続きます。。。

 

教える側は、出来ることなら、どこまででも遡って教えられる力を持った上で、やめどころを作るのが良いと思います。

あえてこれ以上は教えないようにする、とも言えます。

習う側の学び取る力を養い、その人が自分の道を歩む力を身につけてもらうためです。

 

逆に、習う側は、基本、そういった遡ったものは(先生自らが教えない限りは)教えてもらえないものだと考えておくべきです。

習得すべきものを教えてもらうことで、習うことの意味は達成しているんです。

それがどうやったら出来るようになるのか?は、自分で探るんです。

 

歌の先生は歌を教える人であって、発声の基礎を教える人ではないんです。そこはボイストレーナーに教えてもらうことで、発声の下地になる全身の筋力や柔軟性などは、いわゆるトレーナーに教えてもらう。さらにさらに、その下地としてボディワーカーに、動作の質改善をしてもらったり、それ以前に、整体師などの手を借りての骨格調整が必要かもしれない。またこれらのどこかで、内面・心理面を扱う専門家のところで、心理的ブロックを外す必要が出てくるかもしれない。

歌の先生に全てを教えてもらおうというのは、土台無理なんです。

 

といったように、どの分野の専門家も、あくまでその分野の専門家で、ある程度はその周辺のことも分かるでしょうけれど、本当の専門家には及びません。

ただし、及ばないとはいえ、先の歌でいいますと、もし腹筋の強さが必要だとして、トレーナーの人の方が、歌の先生よりも良いとは必ずしも言えないんですね。トレーナーの人は、歌や発声にとって本当に必要なものは、まず分かりません。なぜ必要か?どう使うのか?が分かりませんと、本当の意味では鍛えられないんです。単に腹筋の筋力アップになるだけです。やはり歌の先生から歌のための腹筋の強さとしてのトレーニング法を教えてもらった方が良いかもしれないんです。

 

 

やはり、教える側は、どこまでも遡れるに越したことはない。けれど、それも、歌であれば歌というように、到達点を分かっていた上でのこと。到達点を分からずに、つまり目的地を知らぬままに遡っても、意味はありませんでしょ?

ですから、歌の話でのボイストレーナー、トレーナー、ボディワーカー、整体師などの場合、到達点が分かりませんから、的外れになる可能性もあります。

歌の先生と共同であればいいかもしれませんが、歌の先生自身がある程度遡れていませんと、トレーナーや整体師の行為が良いのかどうか判断がつきません。例えば、歌のための腹筋の強さと、一般的に考える腹筋の強さとでは、内容が違います。そこを分かっていない歌の先生もいます。簡単ではありませんね。

 

そろそろ終わりしましょう。

 

教え、教わるというのは、コミュニケーションですから(いわゆる人付き合いという意味ではなく)、相性があります。出会いのタイミングもあります。

 

お互いの「良い出会いに恵まれた」のために、今回のお話が参考になればと思います。

 

 

 

 

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西洋の身体・和の身体 男性性・女性性 自律神経

私は度々、「西洋の身体・和の身体」といった形で、身体の使い方についてお話をしますけれど、これまたいつも言っているように、どちらかしかないということではなく、どちらの要素が強いか?デフォルト(標準状態・初期設定)か?ということなんです。

 

で、これは、身体の使い方とは関係なく、人間にとっての男性性・女性性、父性・母性みたいなものとも同じなんです。

 

人は誰でも相反するような両極の性質を持っています。そのどちらが強く現れているか?あるいは、どちらに強く支配・影響されているか?でしかありません。

 

これは、同性愛・異性愛といったものとは別のことですけど、見た目ではなく中身の男性性・女性性は、同性愛・異性愛どちらにしても、影響されているだろうとは思います。

 

さて、なぜこんなお話をしているかと言いますと、「やはりエネルギーはトーラス構造で流れているので、トーラスを大事にしてもらえたらな」という思いをあらためて強く持ったからなんです。

 

 

トーラスといいますのは、穴の空いたドーナッツの形を思い浮かべていただくと分かりますように、内側である穴の側を上って行きますと頂上のようなところに出ますね。そしてそこからは下って行くことになります。そこは外側ですね。で、外側をずっと下って行きますと、一番下の頂点にやってきまして、そこからは内側である穴の中に入って行くように上る形になります。

 

つまり、始まりも終わりもない(2次元の)円運動の3次元版として、内と外、上と下が永遠に繰り返されるわけです。

 

これは「集まっては開放↔︎開放されているものが集まってくる」、「収束しては拡散↔︎拡散されていたものが収束される」といった繰り返しみたいなことでもあります。

 

 

そこで、身体の使い方ですけれど、

西洋の身体とは、このトーラス運動的に捉えた場合、内から外へ、下から上へ、という開放・拡散が色濃く現れやすい身体ということになりまして、

 

もう一方の和の身体とは、この逆。外から内へ、上から下へ、という収束・集めてくるエネルギーの色が濃いということなんです。

 

 

 

西洋も和も、ひとつの構造上のどの部分の運動が色濃くなっているか?であって、全く別のものではないということなんです。

 

自律神経でも、交感神経と副交感神経というお互い反対の働きをする神経、どちらが優位になっているか?という状態はあるにしましても、基本、どちらもあるわけですし、どちらかだけがずっと強いままでは問題が起きてしまう。

交感神経と副交感神経、どちらも高い状態が理想です。

(現代人の多くは交感神経が高すぎるので、リラックスして副交感神経の働きを取り戻しましょうみたいなことになりますけれど、どちらも高いことが望ましいんです。)

 

 

そして、何でも同じですけれど、出すべきものを出さないで抑え込んでいますと、爆発しますように、基本、日本人は内へ内へ、下へ下へを向かうものですから、あるとき爆発してしまうわけです。

 

少しお話が逸れますけれど、世界中がコロナに巻き込まれていた時期に、欧米は政府が都市をロックダウンなどして、市民の活動を押さえ込み、市民もそれに従うということがある一方で、日本ではそこまで強権的なロックダウンもなく、マスク着用も厳しくありませんでした。

 

これ、不思議に思いませんでしたか?

 

欧米の人たち、普段はあれだけデモやら何やらで自分たちの権利を主張し、政府の言うことなんか聞く耳持たないぞ!といった感じであるにもかかわらず、意外に聞き分けの良い行動をとり、一方、日本は意外に自由なまま。政府は市民にあくまで協力を求めるという形であって、強制はしない。

何だか、普段と逆でしたよね。

 

おそらく、欧米は普段から発散しているので、押さえ込まれた時には、渋々とはいえお上に従える。一方、日本は、普段抑えているので、こういったとき、本当にお上から抑えられたら、何をしでかすか分からない怖さみたいなものがあるような気がするんですよね。

 

 

でまぁ、それはそれとして、身体の使い方です。

 

アートマイムといいますか、JIDAIメソッドといいますか、そこでの最も重要な要素として「トーラス呼吸」があるんですね。

 

これは、吸うでもなく吐くでもない/吸うであり吐くでもある、といった呼吸で、脳波を乱れさせずに、瞑想状態で運動できるようにしていくためのものでもあるのですけど、別の見方をしますと、西洋の身体と和の身体を行ったり来たりしているんです。

 

一般的に運動となりますと、西洋的なものか?日本的なものか?のような、どちらかの特色が色濃く現れるようなものになりがちです。

私も常々、ここの記事で、西洋的な踊りやエクササイズを和の身体のまま行ったのでは、無理がありますよとお話をしていますけれど、私自身は、どちらの要素も取り入れましょうね、なんです。なぜなら、人間だからです。

 

特殊なことをするためには、特殊な状態になる必要がありますけれど、そもそも全方位的であるものなんです。最初のトーラスの説明のように、ひとつの構造上のどの部分の運動が色濃くなっているか?でしかありませんから。

 

男性性・女性性、父性・母性、そのどちらかしか作動しないって、どこかに無理があります。不自然です。

どちらかしか作動しないというのは、一見強そうなんですよね。「ザ!〇〇!」みたいな感じですから。

ですから、魅力的ではあります。

けれど、私はやはり人間全体、丸ごとだと思っていますので、どちらもであり、その行ったり来たりの波にこそ魅力を感じるんです。

 

トーラスそのもの。

 

 

 

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その道の高いレベルの人から教わる際の注意点?

以前、SNSでこんな感じの発言を見かけました。

「なぜ、最高峰の人から学ぼうとしないのか!?」

 

どう思われますか?

 

私は、最高峰なんて大袈裟なものでなくても、レベルの高い人から教えてもらえば良いとは、思わないんですよね。

 

教え方のレベルではありませんよ。

 

その道での実践レベルの高い人から、基礎的なものは教えてもらえません。

 

いえ、もちろん、教えてくれるとは思います。

けれど、基礎だと考えているレベルが違うんです。

 

こんな話があります。

 

あるトレーナーが、プロ野球か何かの選手たちに、あるエクササイズをやってもらったんだそうです。

選手たちはみんな簡単にこなしてしまったので、トレーナーの人が面食らって、普通はこれ出来ないんですよ。。。と。

で、選手たちは、え?普通の人は大変なんですね。と。

 

つまり、出来ていて当たり前のものが違うんです。

まさか、こんなことが出来ないなんてあり得ない、という感じなんです。

 

他に例えば、腕の力を抜いてプランプランさせて、と言われたとしましょう。

一見、誰でも出来そうなものですよね。

けれど、これですら、大きな差があるんです。

質の高い脱力が出来る人は、適切なところに適切な力を入れることが無意識的に出来てしまっているがために、脱力の質が全く違うんです。

ですから、多くの一般的な人は力を抜いてプランプランさせているつもりでも、これ以上力の抜きようがないという状態であっても、全く十分ではなかったりするんです。

 

といったように、(ここで言う)レベルの高い人と一般的な人とでは、それがたとえ肩を回すでも、振り向くでも、何でもない動き、最低限これくらいの質で出来るでしょ?のレベルが違うんです。

 

で、こういった基礎のキの字にもならないようなものが、その先のことに全て関わってくるわけです。

 

レベルの高い人が指導する際に、そこに気がつける人なら、いい人なら、個人的になら、その相手のレベルに降りようとはしてくれるかもしれません。けれどそれでも、想像だにしないくらいに、遡る必要があったりするんです。

同じことを繰り返しますけれど、通には出来ている肩を回す、振り向くという動作が、実は全く質が違うなんて、教える側も教わる側も、想像しませんでしょ?

これはリハビリのレベルの話になってしまうわけです。

 

もちろん、その教わる側の人は日常生活に問題があるわけではないですから、一般的な意味でのリハビリではありませんけれど、その分野のことをするという目で見ると、リハビリなんです。

 

 

どんな分野でも、大抵は基礎練習みたいなものがあります。そこで、身につけなければいけないものがあるわけです。

けれど、実際には身につかない人がほとんどなんです。

身につく人がセンスの良い人で、そういう人がその道での実践レベルの高い人になっていくんです。

 

ということは、実践レベルの高い人は自分の経験してきた基礎練習をやってもらえば、誰でも基礎が身につくと考えますでしょ?

ところが、身につかない人の方が多い。(身についていると思っているかもしれませんが)

その身につかないタイプの人が、実践レベルが高い(だけで教えることに腐心しない)人に教わっても、難しいと思いませんか?ということなんです。

 

正直な話、私自身がその身につかないタイプの人だったと思います。

ですから、アートマイムを学び始めてから、解剖学の本で勉強したり、様々なスポーツや武術の動きの原理を学びとるようにしたんです。

ただひたすらにアートマイムの稽古を積んだとしても、全くモノにならないだろうと、その点は残念ながらと言いますか確信がありました(笑)

ただ、それは同時に、それを確信出来るだけの才能・センスはあったわけですね。自慢には全くならない才能(笑)

 

と、私自身が、こういうタイプでしたらから、指導の際には、出来るだけリハビリの要素を組み入れながら進めているんです。

そうしますと、まだまだ遡る必要があることも見えてきます。

とはいえ、あまりに遡った内容は、グループレッスンでは取り入れるのが難しいんです。非常に個人的な内容になりますのでね。(こういったものは、定期個人レッスンでじっくり取り組み必要があります。)

 

 

さて、お話が長くなってしまいそうなので、この辺りでお終いにしようとは思うのですけど、実践レベルの高い人の多くは、特に現役であれば、リハビリ指導をしたいと思わないんです。

そもそも、実践レベルの高い人は感覚でやっています。下手に言語化・理論化することが感覚に狂いを生じさせかねないので、迂闊に手を出さない方が良かったりするんです。

リハビリ指導には向いていませんでしょ?

 

お話は尽きません。。。

 

 

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ねじってはいけないのか? 螺旋とは?

武術・武道系のことをされている方はもちろん、身体の使い方の学びで武術・武道系のものに触れますと、

「ねじってはいけない」

という言葉に出会うと思います。

 

そこから、「なんば」の歩き方が良いとなっていったりするわけですけれど、この「ねじってはいけない」には注意が必要です。

 

「ねじらない」と言えど、本当に動ける人のそれと、そうでない人、学ぶ側のそれとでは、中身が違うんです。

 

「ねじる」のは西洋的な動きで、「ねじらない」のが和的な動きだと、考えられていると思うんですけど、武術・武道系に出てくる言葉で、西洋系では出てこない言葉があります。

 

「割る」です。

 

「割る」という言葉は、武術・武道系になんとなく触れた程度ですと、出てこないと思うんですけど、基本は「身体を左右に割る」になりまして、でも聞いてもよく分からないですよね?

 

身体を左右に割る??? ですよね。

 

で、「割る」というのは西洋的な動きには出てこない言葉です。

 

なぜか?

 

「ねじる」というのは、「割る」+「伸びる」に近い動きだからです。

 

同じとは言いませんけれど、「ねじる」とは、「割りながら伸びる」ような動きなんですね。

逆に、「割る」とは、「ねじるけれど伸びない」ような動きなんです。

 

 

西洋の身体は有線で繋がっていて、和の身体は無線で繋がっているというお話を以前しましたように、和の身体は無線であるがために、伸びることが難しいんです。伸びられない身体で、それでもねじるような動きをしようとしますと、「割る」という、隣り合ったものがズレるような使い方になるんです。

 

そして、もし「割る」が出来ないままに、ねじるような動きをしますと、ねじりのエネルギーが流れていく先がなくなるために、関節を痛めてしまいます。

 

見方を変えますと、「割る」ためには、本格的に無線的な身体になっている必要がありまして、多くの日本人は無線でもなく有線でもなく、混線している身体ですから、「伸びないでねじる」は単に関節を痛めることになりますから、「ねじってはいけない」となるんです。

 

「割る」ことが出来ず、そして「ねじらない」で動きますと、一枚の板のようになってしまいます。

板を人間に見立てて、歩かせようとしますと、当然、「なんば」の歩き方になりますでしょ?

(一般的に「なんば」とは、右足と右手が一緒に出るような歩き方をいいます。)

 

 

 

武術・武道系のことをされている方の中には、「螺旋」が大事だという言う方がいます。

これは、「ねじる」ということですよね。

ねじらないで螺旋の動きは、出来ませんでしょ?

 

「螺旋」に意識が向かうということは、有線的な身体の使い方だから。と言いますか、有線であることに自覚的なんだと思います。

 

 

ちょっとお話逸れますけれど、本当に螺旋の身体の場合、真正面にまっすぐ立っていましても、左右の半身ごとに螺旋・ねじりが働いているんです。

一枚の板ではないということです。

 

 

さて、「ねじってはいけない」ですけれど、これをそのまま受け取るのでではなく、「割る」とセットにするか? あるいは「ねじってもいい」ただし、「有線で伸びながら」とするか?

(伸びる方向の問題は、ここでは触れません)

 

 

何か参考になればと思います。

 

 

ちなみに、西洋的なねじり・螺旋であっても、様々なところに「割る」感覚があることが望ましいと私は考えています。

 

 

 

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