オーガニックマイムJIDAI の「身体」「表現」考

オーガニックな身体の使い方、表現についてのいろいろ。時々、甘いもの。

身体演技と芝居の違い 1 ~バレエや日本舞踊の方に~

バレエや日本舞踊といった、きちんと形式がある中で、
踊りではなく内面を表現しなければならないものには、
実際にやってみないと決して分らない、
お芝居とは違う演技の難しさがあるんです。


今回は身体演技芝居について、考えてみたいと思います。


ちなみに身体演技といますのは、私の勝手な造語なんですけど、
ここ何回かでお話してきました身体表現(身体運動表現ではなく)に通じるものでして、
今回、芝居との違いを考えていくことで、
いわゆる演技とは違うことが見えてくると思うんです。
(もちろん、身体運動表現との違いは、よりはっきりしてくると思います。)



先日、こんなことをツイートました。


「日本舞踊のお弟子さん仲間に、

形を崩さずに気持ちの現れる演技の方法(芝居では成り立たない世界)を、
少しでもレッスンしてあげられたら、随分変わるだろうなぁと思うけれど、
師匠の手前、そんなことは言えず。。。
もちろん、求められればの話だけれど、いつも葛藤。」



バレエにしましても日本舞踊にしましても、ベースは踊りですよね。
ということは、身体のポジションはとても大事ですから、
演技をする際、気持ちを込めればいいというものでもなく、
また身体のポジションを無視して、日常生活通りの動き、形をするものではない
ということなんです。


簡単に言ってしまいますと、
姿形の美しさを感じさせたまま、演技する必要があるということですね。
(悪態をつくといったものも、美しくということ。)



ところで、身体演技云々の前に、身体表現といわれるものは、
まず身体を美しく見せる訓練を積んでいきますでしょ?
バレエのバーレッスンなんて、ほんと大変そうですよね?
その上、脚を上げたり、跳んだり回ったり・・・
日本舞踊も素人目には分らない、やっぱり大変な身体のコントロールが求められるんです。


そういったものを身につけていくことで、
徐々にそれっぽくなってくるわけなんですけど、
それはあくまで形の上での話なんですね。
形がそれっぽくならないことには、バレエも日本舞踊も始まらないわけで、
演技的なものは、まずは関係ないんです。



けれど、観客を魅了するのに本当に必要なものは演技なんですね。
(前回までお話していました身体表現と身体運動表現の違い。
形がそれっぽくなるところまでが身体運動表現で、
それ以降の演技的なものが含まれるのが身体表現ということになります。)



要するに、演技のないものは、
ただ「上手ね」「綺麗ね」で終わってしまうということなんです。




で、その演技なんですけど、
役者さんのようにお芝居をしている人が上手かといいますと、
それがそうではないところが、この身体演技の難しいところでして、
一般的に役者さんは気持ちを込めることに意識を使っていまして、
身体は使えていないんですね。



例えば、「悩む」という表現の場合に、
役者さんは本当に悩むようになることを重視するあまり、
身体は全くの置き去りになるか、
ジェスチャー的に安っぽい形を作ったりすることになってしまうんです。


悩むのに、腕組みしたり、下を向いて首をかしげたり、
眉間に皺を寄せたりといったことは、
起こってはいけないわけではありませんが、
本質ではありません。
また、身体が置き去りになるといった場合、
自分がどんなポーズをとっているかに無自覚ということも含めまして、
ぼーっと突っ立ったままで悩まれても困りますし、
本人気がつかずに小さくうずくまられても困るんですね。



身体演技といいますのは、ある形の中で、もちろん、それは美しさを持ちながら、
それでも、悩んでいるように”ぱっと”分らせなければいけないんです。
(ぱっと分らせるには、身体の質の変化も重要。
いろいろ動いて説明的に分らせるのは、表現ではなく説明。)


この「ある形の中で」といいますのは、自分がしたくない形ではあってもというのが、
またポイントでして、その形では悩んでいることを表すことは出来ないよ、
ということは許されないんです。


このあたりのことは、実際に悩みを持たれている方でありませんと、
何だかさっぱり、、、かもしれませんね。
すみません。。。


おつきあいを。



このように、芝居といいますのは、
自分のしたい形や動き、それと気持ちの強さでの演技なんですね。
ですから、身体の美しい形でのコントロールとは相性が悪いんです。



では、それを克服して、身体演技とするにはどうしたらいいのか?


この難しさを解消する、肉体面のひとつの大事なポイントは、
腰椎にあります。



大抵の場合、芝居をしようとしますと、力が抜けるんですね。
それ自体は悪いことではないのですけど、
腰椎周りの力まで抜けてしまうことで、形が崩れてしまうんです。
ですから、とにかく腰椎は真っすぐにしておく。
その上で肩甲骨を使えるようにし、呼吸で胸のニュアンスをいろいろ出来るようにする。



もちろん、口で言うほど簡単なことではないですよね。
腰椎を真っすぐにといいますのも、腰椎を意識したのでは上手くいかないものでして、
別のことに意識を持っていくと、やりやすかったりするんです。


こういったことは、直接の指導でありませんと、変な誤解を生み出しかねませんので、
具体的なことは言えませんけれど、
少なくとも、こういったことを意識するかどうかだけでも変わると思いますよ。



この腰椎周囲の強さは体幹の強さでもあるんですね。
けれど、いわゆる体幹レーニングで筋肉の鎧をつけるようなことは、
かえって害になってしまうんです。


身体演技をしようという人は、体幹の強さは必要ですけど、
体幹レーニングには要注意!なんです。
(本当はスポーツでも、同じことなんですよ。)



さて、身体演技の肉体的なポイントではなく、気持ちの方ですけれど、
ここが微妙なデリケートな問題を孕むところなんですよね。。。



つづきは、また次回。




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