身体演技と芝居の違いですけれど、少し前に
『内面重視での演技・・・身体はどこに？』シリーズでお話しましたことでもありまして、
身体演技の出来る人と、芝居になってしまう人の違いは、
気持ちと身体の扱い方の差なんですね。
を先にご覧下さいね。）
ひと言で言ってしまいますと、
身体演技の人は身体で演技をし、芝居の人は気持ちで演技をする。
ということなんです。
まぁ、言葉のままです （笑）
ところが、厄介なことに、、、そう、ここが本当に厄介！でして、
前回「微妙なデリケートな問題を孕む」と申しましたのが、ここにあるんです。
それは・・・
身体演技をしている師匠自らがが
「気持ちが足りない」
「気持ちをもっと持って」
という言葉で指導してしまうんです。
これは、本当に根深い問題だと私は思っているんですね。
以前NHKで放送していました「スーパーバレエレッスン」という番組の中で、
吉田都さんが演技に対する指導で、
やはり「気持ち、気持ち」っておっしゃっていたんですね。
その上、日常生活でいろいろ経験することが大切だと。
芝居の世界と同じなんです。
もちろん、それで上手くいくのなら、それでいいんです。
例えば、吉田都さんにしても、他の師匠さんたちにしても、
気持ちで身体演技が出来てしまうのでしょうし、
そうやって身につけてきたと思われているわけですから。
（「身につけてきたと思われている」であって、
「身につけてきた」とは言い切れないと、私は思っています。）
けれど、私が思いますに、
こういう方たちは、身体と内面の一致度が非常に高いんですね。
言い方を変えますと、身体がその状態にならない限り、
内面はそうはなり得ないんだと思うんです。
ところが、一般の人は身体がどうだろうとお構いなく、
内面だけでその状態になれる（なれていると思えてしまう）んです。
これは、私からしますと師匠たちは、
そこまで心と身体を磨き上げてきたということだと思うんですね。
例えば、身体は１つのものとしての連動性が重要ですし、
本来、身体構造的にはそう出来ているんですね。
けれど、本当にそれを使いこなすには、訓練が必要なんです。
（それは身体の訓練かもしれませんし、意識の訓練かもしれません。）
で、こういったものは、身につけば身につくほど、
身体への意識は少なくて済むようになるんですね。
自転車に乗るのと同じですね。
それらと同じように、師匠たちは身体への意識が少なくても、
十分に機能出来るようになっているんです。
ですから、気持ちの変化に応じて、身体は自然と変わるんです。
ところが、私も含めて多くの人は、そうはいかない。
だからこそ、身体から気持ちを作るという、
普通とは逆の方法をとることを、私は勧めているんですね。
これは、人によりましては、違和感を覚える方法だとは思います。
「なんだか嘘をついているみたい」
「ずるい感じがする」
上手くいけばいくほど、そう思われるかもしれない。
人それぞれですからね。
けれど、もしこれまでの自分のその信念（やり方）で上手くいかないなぁ、
という想いがあるのでしたら、考え方を変えた方がいいかもしれない、
そう思うんですよ。
私自身のことでいいますと、身体から気持ちを作るという方法で、人からは
「思いに合わせて自然に身体が動く」
と言ってもらえています。
（自分では、まだまだ未熟だと思ってはいますけど、
こう思ってもらえるのは、ありがたいとも思っています。）
で、実は、希望もあるんです。
今は亡き中村勘三郎さんが息子さんたちに稽古をつけている際、
（テレビで放送）
「お前たちは、気持ち、気持ちっていうけど、そうじゃぁねえんだよ。
身体（形だったかな？）なんだよ。」
「俺は気持ちなんて持っていなくたって、よっぽどお前たちより、
気持ちが現れてるだろ？」
あれだけ、気持ちでやっているようにしか見えない勘三郎さんの、
この言葉を聞いたときは、
（勝手に）何だか後押ししていただいたような気持ちになりました。
身体演技は芝居とは違うという前提に立つことで、
見えてくるものがあると思うんです。
バレエや日本舞踊などの身体訓練をして、プラス芝居の稽古を積むことで、
身体演技が出来るようなれるとは限りません。
身体演技というものに目を向けてみてはどうでしょうか？
Body,Mind&Spirit 本当の自分の身体は天才だ！
