今回はパントマイムの演技や動きについての、少々マニアックなお話。
MASHさんという素敵な歌手の
という曲のミュージックビデオに出演させていただいたのですが、
この映像4分15秒あたりからの風船のマイム。
引っ張ってゴムの感じを確かめている動作が、2回出てきます。
1回目は縦に。2回目は横で。
1回目では、ただゴムの感じを出しているだけですが、
2回目の横の時には、ゴムの感じを出しつつ、
何かを考えている(思考を巡らせている)動きをプラスしています。
目線とか、頭の動きに注目してしみて下さい。
さて、これが何を意味するのか?
今回、ここのマイムで表現すべきことは、2つ。
(1)今、手にしているのはゴム(風船)ですよ、ということ。
(2)何かを考えている(思考を巡らせている)んですよ、ということ。
まず、(1)のゴムですよ、ですけれど、
ビヨヨ~ンという動きを何回行うのが良いのか?
1回では少な過ぎなんですね。
ここは、見る人にとって、何を手にしたのか全く予測出来ない状態。
ですから、1回ですと理解出来るかどうか微妙なところですよね。
「えっ?今の動きは何だったの??」
となってしまう可能性が高いわけです。
もし分かったとしましても、短い時間での小さな動きですから、どこかに
「もしかしたら違うかも・・・」
という疑念は残っていて、要するに自分の判断に安心感はない状態なんです。
では3回(以上)行なうのはどうか?
基本的には4回以上行なうということは、ないんですね。
3回行えば、ほぼ全員が理解出来ますから、
それ以上同じ説明を繰り返すことは、冗長になってしまいます。
見ている人は、
「もう分かったよぉ、、、さっさと次のことやってよぉ。」
となってしまうってことですね。
けれど、今回の演技では3回は必要無いと判断しました。
必要無いといいますか、3回でも多いと思ったんですね。
それは演技全体のテンポ(ストーリー展開のスピード)からみて、3回ではそれこそ
「また、同じことやってるよぉ。。。」
となってしまうと思ったからです。
試しに、この映像を見て、3回行っているところを想像してみて下さいね。
何か感じるところがあると思いますよ。
ということで、2回に決定。
で、次の(2)何かを考えている(思考を巡らせている)んですよ、というところ。
これを、どのタイミングで行なうか?
やはり、2つあります。
(2-1)(1)のゴムですよ、が終わった後
(2-2)(1)のゴムですよ、の最中
ちなみに、(1)の前というのはあり得ませんね。
まだ何を手にしたのかを、判明させる(見ている人に提示する)前に考え始めるなんてことはありませんものね。
もし、前に行なってしまいますと、ピエロの内面での声が
「これは何? これはゴム(風船)。」
となってしまいますでしょ?
ここでは、
「これはゴム(風船)。どうしよう?」
でなければ、困りますからね。
では、後か最中か?
これは、どちらも可能です。
けれど、やはり違いは当然ありまして、だからこそ(2-2)の最中を選択したんですね。
どんな違いがあるのか?
後というのは、分かりやすいんです。
1つの動作に対して、1つの情報しか載せていない。
つまり、ひとつひとつ丁寧に説明しているわけですから、
見ている人にとって情報の見落としが少なくて済む。
ただ、その分、幼い感じになるんですね。
小さな子どもにお話を聞かせているような感じ。
それに対しまして、最中といいますのは、
1つの動作に対して、複数(この場合は2つ)の情報を載せることです。
これには注意が必要でして、情報を詰め込み過ぎては、
結局どの情報も伝わらないことになってしまいますし、
技量によっては、たとえ2つであっても、何だかよく分からない動きで、
見ている人を困惑の渦に巻き込むことになってしまいます。
けれど、上手くいきますと、単なる情報の伝達という感じではなくなってきます。
お話を聞かせている感じではなくなり、
”お話を感じさせる”というようになるんですね。
1つの動作に対して、1つの情報しか載せていない動作が多くなりますと、
ジェスチャー(情報伝達)的になっていきますが、
複数の情報を載せた動作が多くなりますと、マイム(表現)になってくる。
ということで、最中に決定。
さて、ここでも試しに、映像を見て、ゴムですよだけを2回行って、
その後、考えていますという動作をしたところを想像してみて下さい。
(考えています、の時、手はどうしたらいいでしょうね?風船はどうするか?)
こういったことの結果、
(1)今、手にしているのはゴム(風船)ですよ、の動作の2回目を行ないながら、
(2)何かを考えている(思考を巡らせている)んですよ、
を表現することになったんです。
長くなりましたね。。。
(この手のお話は、今回限り。最初で最後ですね。)
何かしら参考になることがあれば幸いです。
Body,Mind&Spirit 本当の自分の身体は天才だ!