オーガニックマイムJIDAI の「身体」「表現」考

オーガニックな身体の使い方、表現についてのいろいろ。時々、甘いもの。

『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』

とんでもない映画でした!

ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』

演劇史に名を残す偉大な演出家ピーター・ブルックの稽古場を

初めて映像化したドキュメンタリー映画です。


試写会に招待していただいたのですが、興奮しっぱなしでしたよ!

(上映後、会場を出ましたらスコールのような豪雨で、それはそれでまた興奮 笑)




さて、何がそんなに私を興奮させたのか?

もちろん、舞台に立つ表現者の多くが感銘を受けるとは思うんですけど・・・




アートマイムだったんです!

オーガニックマイムだったんです!



ピーター・ブルックの語る言葉が、その演技観が、

アートマイム、オーガニックマイムそのものだったんです。



それは、何か?




リアリティ。



リアリティです。




ピーター・ブルックは言います。


「既に経験していることに気がつくことが重要だ。一瞬のリアリティをしっかり追うんだ。」


「常に自分自身の中でリアリティを追求する作業なんだ。

この真実に向き合う勇気なしでは、演技のレベルは向上しない。」





で、問題なのが、このリアリティとは一体何か?ということなんですね。

演技をする人の多くが、嘘の演技をしたいとは思っていないはずです。

そのために自分の内面を見つめたり、イマジネーションを働かせたりするのですけど、

リアリティに辿り着くのは難しい。




ピーター・ブルックは言います。


「人の心を釘付けにするには、役者の全身に”なにか”が宿る必要がある。」



「想像力とは役者の特別な力であって、頭で考えるイマジネーションではなく、

もっと強く生きている想像力だ。」





ここなんです!

頭で考えることではないんです。

全身に宿るんです。



と、言葉で言うのは簡単です。

むしろ、簡単でないからこそ、意味があるわけです。

舞台に立つ人間は、観る側の人と同じであってはいけないのですから。

(”応援してもらいたい”という意識で舞台に立つのでしたら、その限りではありませんよ。)




私はこの秘訣が呼吸にあると考え、

”エモーショナル・ボディワーク”などで伝えていまして、

このブログでも時々お話していますけれど、

”受け身の感覚”が重要なんですね。




真剣に演技に集中する・・・

そういう類いのものではないんです。



自分の気持ちを表現する・・・

そうではなく、自分の生み出すべき世界の中に生きていることを、

一瞬、一瞬、感じ続けることなんです。



それは、喜びなんですね。

演じる者だけが味わえる喜びなんです。

たとえ、絶望の感情であろうと、殺意の感情であろうと、

世界の中に生きていることは、大きな大きな喜びなんです。





マイム公演の後に、必ず質問されることがあります。


「実際の経験をイメージしながら演じているんですか?」


私はいつも、この質問の前で窮してしまいます。

なぜなら、YesでありNoでもあるからなんです。




自分の身体の感覚にないものは、決して演じることはできません。

といって、実際に経験したことがあるということではないんですね。


また、イメージは頭ではしておらず、身体から沸き上がる状態にしているんですね。

けれど、このことは経験の無い人には決して伝わりません。


ですから、窮してしまうんです。





ところで、いわゆる役者さんはセリフがあります。


ピーター・ブルックはリアリティのある身体になることを求め、

その身体からセリフが発せられるようにしています。


それに対しまして、私たちマイムはセリフはありません。何があるのか?



動き。



動きです。



ここは誤解されると困るのですが、セリフの変わりに動きがあるというのではありません。

それでは、ジェスチャーです。


また長くなりますので、詳しい説明はしませんけれど、

アートマイムは、オーガニックマイムは、

リアリティのある身体で様々な魅力的な動きをするんです。


踊りではなく、演じる動きです。

ですから、その動きは

音楽的リズムではなく、内面のリズムになります。



このことをピーター・ブルック”テンポ”という言葉を使って言います。

「日常で起こることを、抽出したエッセンス。それがテンポの正体だ。」




このテンポ、内面のリズムというものを無視した演技・・・嘘の演技、

これを回避する唯一の方法が先述しました、”身体のリアリティ”です。


頭で考えるから、嘘の作為的なテンポ、リズムになってしまうんですね。



こういったテンポ、リズムが重要なものですから、

私は”身体運動表現””身体表現”を分けて考えますし、

特にアートマイム、オーガニックマイムを”身体演技”と言ったりするんですね。




私にとって動きの訓練の重要なポイントは、

どんな動きをしても、どんなポジションをとっても、

リアリティのある身体でいつづけられるためのものということなんです。


そういった意味において、この映画『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』

に出てきます女性ダンサーは、非常にアートマイム的、オーガニックマイム的でした。




さてさて、また長くなってしまいましたけれど、最後にひとつ、面白いことを。

映画の中で

「パントマイムじゃないんだ。」

ピーター・ブルックが諭すシーンがあります。



おお!・・・世界中でパントマイムは良くない演技としてみられているんだなぁ。。。

まぁ、分かりますけどね。。。


だからこそ、私たちは「アートマイム」とか「オーガニックマイム」と

名乗るようにしたわけですから。



11月7~10日シアターカイに、アートマイムの祭典(?)として、

ポーランドからステファン・ニジャウコフスキとそのカンパニー、

ゲストとして私の師匠であり、ステファン・ニジャウコフスキの弟子で右腕であった

テリー・プレスがやってきます。


まだ詳細は明かされていませんが、ワークショップの参加募集は始まっています。


ぜひ、映画『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』(9月20日から順次公開)を観て、

11月にはアートマイムのワークショップにご参加下さい。

もちろん、アートマイム公演観劇も。




では、最後に。

ピーター・ブルックは言います。

「真実があれば、セットは不要。」


私たちマイムはそれにプラス

「言葉も不要。」




   「立つ」「歩く」レッスン 土台編/中級基礎編 9月18日




Body,Mind&Spirit 本当の自分の身体は天才だ!




マイムから心と身体の平和を


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