オーガニックマイムJIDAI の「身体」「表現」考

オーガニックな身体の使い方、表現についてのいろいろ。時々、甘いもの。

表現力と身体瞑想

身体瞑想

とでもいうべきものが

表現力

にとって、非常に重要な意味を持ちます。




1年2年ほど前だったでしょうか、縁あって、
2日間のアレクサンダーテクニークの演技ワークショップを見学させていただいたことがあります。

講師の方は大学(アメリカ?イギリス?)の演劇学部の学長でもあり、女優でもある
サラ・バーカーさんという方でした。


非常に素晴らしい内容でしたよ。
参加されていた役者さんたちの演技に、大きな変化が生じていました。

アドバイス前と後の演技を見られるのは、とても分かりやすいですね。



アドバイス前の演技は、皆さん高い集中力でやられているのは分かるのですが、
セリフの間(ま)を意識的に図っているようにみえますし、
集中するあまりといいますか、集中の仕方だと思うのですが、閉じた感じになってしまうんです。

きつい言い方をしますと、「頑張っている」のが伝わってくる。


それがアドバイス後は、セリフの感じが変わりまして、

「あぁ、その間だよな」

「その調子(トーン)だよな」

って、とても自然ですんなり入ってくるようになったんです。



そんなこともあって、最初は役者さんが演技しているのを見ているという感じだったのが、
役柄の人物とその世界に包まれるような感じになっていったんです。

それは、演じている本人も、周りで観ている人も、みんな感じ取っていました。


で、どんなアドバイス、レッスンであったのか?
詳細は省きますけれど、

大きなポイントは集中の仕方にあると私は思いました。




みなさん最初の集中の仕方は閉じるタイプのものだったんですね。
これは特別なことではなく、役者さんに限らずほとんどの方がだれでも、
このタイプの集中をしてしまいます。

多くの方が集中というものを勘違いされているんです。




それが、拡散型の集中に切り替わった。

本来あるべき集中のあり方です。


どうして切り替わったか?

それは、アレクサンダーテクニークの特徴である、脊椎と頭の関係を良い方向に導いたことと、
もうひとつ、空間に対して意識を持っていけるような言葉掛けがあったからだと思います。


お気づきかもしれません。
といいますか、気づいて下さいね(笑)


「空間に対して意識を持っていく」というのは、私の記事で幾度となく出てくる、
オーガニックマイム(アートマイム)の基本中の基本ですよね。
これ無くして、オーガニックマイムはあり得ません。

だったので、驚いたんです。


(実は、セリフの感じが良くなったのも、この空間に対する意識のおかげ。
セリフに対するアドバイスは一切ありませんでした。)




参加されていた役者さんにとっては、全く初めての意識の仕方だったようですけれど、
非常に重要なことだと感じられたでしょうから、その後に活かされていればと思います。


とはいいまして、都度々々、考えていたのでは、ままなりませんよね。
そのことを当たり前の技術として身につけているに越したことはありませんでしょ?

何しろ、本番の舞台では、そういったものが無意識でも維持されていませんと、
すぐに元に戻ってしまい、閉じた集中になってしまいます。



そこで、冒頭の身体瞑想が出てくるんです。

身体瞑想という言葉は私の勝手な造語ですけれど、
一般的な瞑想が心に重きを置くのに対しまして、
身体と空間(具体的な場所としての空間ではなく、外界という意味での空間)に重きを置くものです。


レッスンの場でそれを意識的に行なう際は、身体を深くまでほぐし緩め、皮膚感覚を上げて、
静かに空間と溶け合っていくことをしていくんですね。


とはいいましても、
オーガニックマイム(アートマイム)は身体瞑想の状態で演じるものだと思っていますので、
必ずしも静かである必要はないのですが、ある程度身につくまでは、
静かなほうがやりやすいですものね。


で、空間と溶け合うというところですけれど、大雑把にではなく、
腕の裏も表も首筋も、お尻も足裏も、指の股や側面も、ほんとうにぜ〜んぶ、
身体のあちこちに意識を持っていくんです。


こうしていきますと、


身体の内側と外との境が消えていき、
自分がどんどん広がっていくんですよね。


それはまるで、意識だけの存在になっていくような・・・


でも、一方で、身体感覚がとても繊細で鋭敏になる。



この状態のとき、「心の動きがイコール身体の動き」となるんですね。

演じる際に絶対に、必要不可欠、欠かせざるものなんです。



もちろん、身体の動きといいましても、その人の身体訓練具合で見かけはそれぞれですから、
オーガニックマイムの場合は、それなりの身体訓練が必要になるんですけどね。


けれど、いずれにしましても、表現すべき感情に対する真実度、それに伴う自分自身への信頼度は、
圧倒的になります。



殊に、演技の間、心の変化のタイミングといったものは、

ここしかない!

というところを掴めるのです。



掴めるといいますと、何だか計算した演技のようですけれど、そうではありませんで、
自分の意識では捉えられない、本当に自然なものになるんです。



以前、スポーツなどで言われる”ゾーン”に入った状態で演技するのがオーガニックマイム(アートマイム)だというお話をしましたけれど、そういうことなんです。


ですから、何かに驚くといった場合も、自分が驚いたことに驚いてしまうような状態でして、
それが、何度やっても、そうなる。

常に初めての経験となるわけです。



だからこそ、観客からは、自然に見える。

演技している姿を見せるのではなく、

世界に巻き込むことができるんです。



少し前にこんなツイートをしました。

「意識・感覚・感情などがいくら重要とはいえ、全ては肉体の運動を伴ってでしか外に表せない。
声でも、モノを書く、描くでも、なんでも。
けれど、肉体のほうが制限が多い。
自分の内なるものが豊かになればなるほど、肉体の制限を大きく感じるようになる。
肉体を忘れるか?肉体の自由度を上げるか?」



身体訓練によって肉体の自由度を上げていくだけでなく、身体瞑想によって、

「意識イコール身体」「身体イコール意識」

を味わうことも、肉体の自由度を上げる大切な要素です。



このことを何度も、そして深く実感していくことで、確実に表現力が磨かれるのです。

思いを込めて身体を動かすのではないんです。


「思いはイコール動き」であり、「動きはイコール思い」であるわけで、

思いと動きを分けて考えてはいけない。


そのことを、頭で理解するのではなく、身体で理解できるようになることが重要。

そのための身体瞑想。



最後に、ひとつだけ。

身体瞑想だけでは表現力が上がるだけですから、
オーガニックマイム(アートマイム)という身体表現をするには、
動きの訓練が絶対的に必要ですよ。


動きの訓練だけでは、ここでいうところの表現力は上がらない、ということはお忘れなく。







2月12日 『「立つ」「歩く」レッスン 土台編/中級基礎編





2月15日 『表現者のための呼吸 
心と身体のワークショップ』







Body,Mind&Spirit 本当の自分の身体は天才だ!




マイムから心と身体の平和を


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