ふぅ~~~、、や~ぁっと、、最後、『牛』、です。
上演順では、一番最初の作品なんですけどね。
さて、この作品では、これまでのマイム界では見られなかった(と思うんですけど・・・)、新しいテクニックを使ってみました。
物語はレストランの設定で始まりまして、登場人物は、ウエイター、客、牛、飼育員の4者。
ひとり4役になるわけですけど、お互いの境界が曖昧になり溶けていくように、この4者がそれぞれの動きの中で、連続性をもったまま入れ替わっていくんです。
この、人物の入れ替わりで、新しい(はず・・・)テクニックを使用。
たとえば、客がステーキを食べる、その口の動きが、徐々に牛の口の動きになり、また、飼育員が牛の首を切り落とす手の動きが、ステーキを切る動きに重なり・・・といった具合。
と言いましても、動きの質の問題ですので、これ以上は説明のしようがありませんで、観ていただいた方だけが分かる・・・今までマイムを観たことない人でも分かる、そんなテクニックです。
それともうひとつ、繰り返し再生のようなもの。単なる逆回し再生とは違いますので、新しいかな?と。
映像ですと、よくありますでしょ。ちょっと、強調しておきたいところを、繰り返すような感じ。
で、作品全体の雰囲気としましては
「ロシアとか東欧あたりのアニメーション作品みたいな・・・」
という感想の言葉で伝わりますでしょうか?
最初から最後まで、繰り返し調の曲が流れ、淡々と進んでいきます。けれど、
「話の基礎は人間が食料にするために、日常的に行っている事だけれど、そういった表現で、奇妙で少し残酷な世界に変わっていて、夢で見そうな・・・」
という感想にありますように、テーマはかなり重たくのしかかってくるようです。
で、いま、「・・・ようです。」と言いましたのは、実はこの作品、テーマが先にあったわけではないからなんです。
作品のきっかけは、「アクトクラス(マイム演技専科)」でのレッスン用に使いました、入れ替わり・変身のテクニックでありまして、そのときは、食べる人が食べられる牛になるって、面白そうだなくらいでして、それを10分くらいの作品に仕立てているうちに、自分でも、
「あぁ、こんなテーマだったんだぁ。」
という感じだったんです。
作品の最後では、客が切っているのはステーキなのか、牛の頭なのか、それとも自分自身の頭なのかといったことを、ほのめかすようにフェードアウトしていきます。
この作品では、大きな誤算がありまして・・嬉しい誤算なのですが、上演順を一番最初にしましたのは、その後のJIDAIワールド(?)の入口になれば、くらいの思いだったんです。
それが、終わってみますと、一番反響がありまして・・・
正直、ちょっと戸惑いました。。。
パントマイムは基本的には、言葉も道具も使わないですから、制約が多いとは思うんです。
ですけど、その制約が逆に、新しい表現の可能性を持っているのだろうなぁ、とも思うわけでして、思わぬ反響に戸惑いながらも、この『牛』は、何かひとつの方向性を示唆してくれたようです。
ありがたや、ありがたや~。