夢を見ているとき、それは少なくともそのときは現実。
私たちの現実ってどこにあるのか？と考えたときに、
いわゆる日常の現実で意識できていることよりも、
こうした夢に現れてくるものの方が、よほど私たちにとって切実な現実なのかな？
という気がするんです。
と言いますのは、夢をどうして見るのか？夢が何なのか？
まだまだ解明されていないみたいですけれど、
少なくとも夢を見ているとき、
私たちは現実の生活の中で抑えている恐れ、欲望、憧れといったものの蓋を
完全に開けているのだと思うんです。
本当の自分の内面が現れてくる場。
ある意味で、夢を見るって自分の見たくないところを見ることになるわけですから、
恐ろしいことですよね。
せっかく自分から隠しておいたのに、、、という感じですね。
けれどその夢を見ることによって、いくらか救われるのかもしれないとも思うんです。
一見、見たくない恐ろしいものであっても、見ることで、体験することで
蓋をしていた心の闇の部分が照らされて、
圧縮されねじ曲げられたエネルギーが少しゆるむのかな？と。
それにしましても、どうして夢を現実だと感じるのかは、
私は科学者ではないので分りませんけれど、
現実にはあり得ない状況でも何でも、
現実だと感じてしまうことに間違いはありませんよね。
しかも、夢は実際には１～２分だったとしても、
１０分にも２０分にも感じられますよね。
それだけ密度の高い時間を過ごしているんでしょうね。
夢には大きな力が潜んでいるように思います。
ところで、私は今のところ、私たちのマイム、オーガニックマイムは
そういった夢を作るのに向いているのではないかと思っているんです。
観客となる方の心の蓋を開けることができるのではないかと思っているんです。
観客一人一人が自分の本当の内面を、
夢の中ではなく劇場で見ることになるのではないかと。
つまり、人が本当は見たくて仕方ない、あるいは見たくないけれど見た方がいいというものを
作ることができる芸術なのではないかと。
なぜ、オーガニックマイムがそういったことに向いていると考えるのかといいますと、
それは夢を作るのに必要になるのが感覚のリアリティーだと思うからなんです。
オーガニックマイムが最も力を発揮するのは、
ストーリー的なものを持ちつつ、小説のようにその情報を理解させるのではなく、
その瞬間瞬間の感覚を呼び起こすことにあります。
もちろん、他の舞台芸術もそういった面はありますけれど、
そこに特化しているのがオーガニックマイムです。
ですから、観客はダンスのように見ることもできますし、お芝居のように見ることもできます。
また、舞踏のように思う方もいるでしょう。
（ただ、誤解し
ないでほしいのですが、
ないでほしいのですが、ダンスやマイムテクニックをみせるために取って付けたようなストーリーを
演じるというわけではありませんよ。）
オーガニックマイムはそれら、ダンス、お芝居、舞踏の原点としての力を持つからですけれど、
と同時に、そのいずれでもありません。
ひと言でいいまと、
「内面という抽象的なものを具象化する」
ことができるのが、オーガニックマイムだと考えているんです。
（と思うようになってきた、といったところなんですけどね。。。）
オーガニックマイムは抽象的に身体を動かす訓練ではなく、
具体表現の訓練を積んでいきます。
ジェスチャーや記号演技と間違わないでいただきたいのですが、
モノを見たり触れたり、持ったりといった肉体感覚の再現・表現技術はもちろん、
認識と行為の関係性
（例えば、網膜に何かが映る、それが何かを判断、
そのモノに対する好き嫌いなどの感情の変化の確認、
その感情に基づいてどういう行為を起こすかの決断、実行、といったこと。）
まで徹底して技術（心と身体の技術）として身につけていくんです。
簡単ではありませんけれど、
このことによって人間の普遍的な感覚を呼び起こす力を身につけていくわけです。
ですから、私は抽象的な作品を作りません。
「具体表現の技術を使って、内面という抽象的なものを具象化する」
それが私の考えるマイムです。
「目に見えないものは、見えるものによって表現される」わけです。
やはり夢を作っているのだと思うんです。
