また、脱力のお話です。
大抵の場合、脱力といいますと、腕を中心とした上半身の脱力を取り上げると思うんですけど、上半身の脱力のためには、どうしても下半身抜きには語れないんですね。
下半身の安定と脱力がありませんと、上半身はどうしたって脱力出来ません。
そこで、まず下半身の安定ですけど、下半身がぐらぐらと不安定では、その上に乗っている上半身は、ついつい力んでしまいます。
不安定に揺れる吊り橋を渡る時、誰でもぎゅっと手すりのロープを掴みますでしょ?場合によっては、腕をからませて、しがみついたりしてしまいますよね。
それと、同じなんです。
下が頼りになりませんと、上は安心出来ませんから、脱力なんてとんでもない、ということです。
と言いましても、下がただがっしりと強ければいい、ということではないんです。
私たちは動かなければいけないですし、そうでなく、見た目には、踏ん張っているような形でありましても、足をぎゅっと固めてしまうのは問題です。
足が力んでしまいますと、2つ問題がありまして、ひとつには、私たちの体は全身繋がりあっているわけですから、一カ所の変な力みは、他の箇所の力みを生みやすくなってしまうということ。
もうひとつは、足が力みますと、地面に沈みこむように立てず、その表面に乗っかったようになってしまいますから、本人はしっかり立っているつもりが、実際には非常に不安定で、弱い立ち方になっているんです。
建物でも、しっかりと地中深く掘って、基礎を作るのと同じですね。
力といいますか、体の重さといいますか、エネルギーが地面の表面で止まってしまうことなく、出来るだけ地中深くに行くことで、安定するわけです。
そして、実はこの、エネルギーを地中深くに届かせるのに、下半身の脱力が必要になるんです。
脱力と言いますと、なんだか頼りない弱~い感じがしますけど、それは気力の抜けた状態を、脱力だと思ってしまうからなんです。
力が、体の集約されるべき場所に、きちんと集約されつつ、抜くところは徹底して抜いていく。
特に、関節を固めて(力ませて)しまってはいけません。膝はもちろん、足首も股関節もです。
固めたところで、エネルギーは止まってしまいますから。
股関節を固めてしまえば、股関節より先の足はただの物体。地面の上に立つどころか、股関節の上に立っているようなものになってしまいます。
だるま状態ということですね。
下半身の脱力は簡単ではありませんから(もちろん私にとりましても)、動きの中で、常に注意を向けていきませんと、つい力に頼ってしまうんです。
柔らかく、しっかりと重さを伝える。
これキーワードです。