和の身体はイン(内向き)。
西洋の身体はアウト(外向き)。
少々間が空いてしまいましたけれど、前々回から続き、“その3”になります。
インの身体とアウトの身体、
その決定的な要因はどこにあるのか?
ここで、私の個人レッスンを受けて下さっているバレエの方の興味深いお話を。
この方は、ご自分ではっきり自覚される、完全にアウト(西洋)の身体。
で、曰く、
踵を踏むとすっとつま先立ちになっていく感覚なんだそうです。
どうですか?みなさんは、
立った姿勢で踵を踏もうとして、踵が浮いてきますか?
この方の生徒さんたちは、みんな沈む感じになってしまうので、
どうしたものか?と悩んでいらっしゃるんですね。
私も、このことは全く考えたことがなかったものですから、
試してみました。
・・・おお!!
確かにアウトの身体にしておきますと、
踵を踏む力が、踵を浮かせつま先立ちになっていく力になります!
インの身体ですと、ますます踏む力となって、沈む感じ。
同じ踏む力であるにもかかわらず、
身体がインかアウトかで、
エネルギーの上下方向が違ってしまうことを、
あらためて実感しました。
ところで、身体のインとアウトって、どうしようもないものなのでは?
スイッチが可能なの??
だと思いますので、先日のクラスで行なった実験のお話を。
おふたりいれば簡単にできますので、ぜひ試してみて下さい。
おヘソの前辺りで両手の指を組みます。楽に休んでいるようなポーズですね。
そして、両肘を伸ばしたまま、頭上に上げる。
これを、仰向けに寝転んだ状態で行なうんです。
両脚はすっと伸ばしておきます。
このとき、ペアになった人が、寝転んだ人の頭(頭上)側から、頭上に上げようとする手を押さえる。
少し膝立ちになって、身を乗り出して両腕で押さえる感じです。
結構、しっかりと押さえます。
これ、エネルギーの通る身体になっていませんと、
頭上に上げようとする腕が、肩の高さに届く手前くらいで、どうにもならなくなります。
ところが、インの身体を保ったままでいられますと、
ぐーっとかなり上まで上げることが出来るんですね。
私でなくても、クラス生もインの身体を保てれば出来ました。
これを、アウトの身体でやったらどうなるのか?
まぁ、アウトの身体になること自体が、普通は出来ませんので、
厳密にはアウトの身体とはいいづらいのですが、
生徒さんたちには伸びやかに動くようにやってもらいました。
全く、ダメでした。
そこで、マイム歴よりダンス歴のほうがはるかに長い女性に、
バレエのアンオーのときの身体の感じでやってもらいました。
これも、全く、ダメでした。
インの身体のときと、まるで発揮される力が違います。
つまり、エネルギーが通らない。
そこで、私がアウトの身体になって、やってみました。
インの身体のときと同じ結果が出ます。
(ちなみに、私はインのほうが自然です。アウトは意識的になります。)
見た目の動きは明らかに違います。
これを踏まえて、立位で同じことをしてみました。
そうしましたら、
さらに興味深いことが!
インでもアウトでも、押さえている人は同じ力(力の出どころ)を感じるけれど、
アウトの身体、つまり西洋の身体にときは、上半身だけでやっているように“見える”と。
インの身体、つまり和の身体のときは、全身で(足元から)やっているように“見える”と。
外から見ている人はどうか?といいますと、アウトでは伸びやかに見え、インではそうでもない。
そのためか、アウトのほうが楽そうに見える。
ちなみに、寝転んでいるときは、インのほうが楽そうに見えるとのこと。
アウトはちょっと大変そうに見えると。
実験のお話が長くなってしまいましたけれど、
今回の実験から、もしかしたら私たち日本人から見て、
西洋人が腕力でやっているようにみえることも、
実は足元から全身を使っているのかもしれない、
そんなことが考えられます。
その見た目に引っ張られてしまうと、
私たちは本当に腕力頼り、上半身のみになってしまうのではないか?
他にも、何かありそうです。
で、肝心のインの身体とアウトの身体の違い、使い分けについて。
私がインの身体とアウトの身体の使い分けを、どう行なったか?ですけれど、
仙骨に連なる関節の扱いを変えたんです。
皆さん、日本人と西洋人とでは骨盤の角度が違うというお話を聞いたことがありますでしょうか?
力の焦点(重心)が腰椎の何番にかかるかが違うという話もあります。
大雑把にいえば、
日本人は骨盤が後傾(お尻が下がる、垂れる)
西洋人は前傾(お尻が持ち上がる)
ですから、この一連の記事の「その1」でも挙げた特徴になるんですね。
和の身体・・・下へ/引く/しゃがむ/箸・茶碗
西洋の身体・・・上へ/押す/椅子/ナイフ・フォーク
そもそも、この身体のインとアウト、和の身体と西洋の身体の違いに目を向ける理由は、
エネルギーが最も通りやすい身体で事に当たらなければ、
表面的な形に縛られてしまうと考えるところにあります。
それは、もちろん、強さ、美しさ、快適さ、自然体につながる話です。
また、だいぶ長くなりました。。
次回に続きますが、今回のお話で、安易に骨盤の角度を変えたらいいとは思わないで下さいね。
実験のところでも言いましたように、私は「仙骨に連なる関節の扱いを変えた」のであって、
骨盤の角度を変えるという意識の仕方はしていません。
骨盤の角度を変えるという意識は、危険だと思っています。
また、次回。
10月16日 『動作塾』
(パンチ・突き)
10月30日 『刀の扱いから、身体の使い方とエネルギーの伝わり方を学ぶ』
11月17日 『刀の扱いから、身体の使い方とエネルギーの伝わり方を学ぶ』
11月24日 『呼吸力 こきゅうぢから』
来年 1月27日
『マイミクロスコープ
〜夜のアートマイム劇場〜』
Body,Mind&Spirit
本当の自分の身体は天才だ!