いわゆるストレッチ、やったことのない人はいないのでは?というくらいポピュラーですよね。
筋トレとセットになっている感じもあります。
スポーツやダンスには欠かせないでしょうし、運動が苦手、けれど体を動かさなければ、という人にも、ストレッチは推奨されますね。
ところが、そのストレッチが悪影響を与えていると、考えたことはありますか?
ストレッチによるケガではなく、動き・パフォーマンスに与える悪影響です。
ストレッチと言いますと、「筋肉を伸ばす」こととなっていますけれど、スポーツでもダンスでも何でも、身体を動かす際の「伸ばす」とは、全く意味が異なるんです。
ストレッチで伸ばすのと、動きとして伸ばすのとは、全くの別物ということなんです。
どう違うのか?のお話の前に、別物であることの何が問題なのか?のお話を少し。
まず非常に単純なこととして、縮こまった動きと伸びやかな動き、どちらが良いと思いますか?
当然、伸びやかな動きですよね。
その伸びやかな動きといいますのは、エネルギーが外に放出されていることを言います。
(縮こまった動きは、エネルギーが内にギュッとこもってしまっている状態ですね)
走るでも、泳ぐでも、投げるでも何でも、エネルギーが外に出ている量が多いほど、パフォーマンスは上がります。エネルギーが内に向かっていては、頑張っている割に結果がついてきませんよね。
よく「力を抜け」と言われますけれど、これはエネルギーを内に向かわせないようにする意味があるんです。
この「伸びやかな動き=エネルギーが外に放出されていること」といいますのは、伸びやかな動きが、決して動きの大きさのことを言っているのではない、ということでもあるんです。
エネルギーが外に放出されているのを、人は感じて、伸びやかだと思うわけです。エネルギーの向きが外向きだからこそ、伸びやかさを感じる。
ダンスですとこの辺りのことは分かりやすいかと思います。
黒人の人などはさり気なくリズムをとっているだけの動きでも、伸びやかさを感じさせてくれますでしょ?
日本人ではなかなか難しいですよね。同じ伸びやかさを出そうとしますと、どうしても動きを大きくしてしまいます。
これは、日本人は身体を動かす際の「伸ばす」が出来ていないからです。
伸ばすことが出来ないので、大きく動くことで何とかしようとするのですけど、いくら大きく動いても伸びやかという印象にはなりませんね。一所懸命という感じになってしまいます。
伸びやかな動きがどういうものかが、こうして分かってきますと、ストレッチとはあまり関係ないことが分かってくるのではないかと思います。
そもそも、ストレッチをするとき、エネルギーを外に放出することを意識しますか? ということですね。
多くの人は、伸ばそうとする部位に意識を向けます。外ではありません。当たり前ですよね?どこを伸ばすのか意識せずにいたのでは、それは一体何をしているの??ですものね。
もちろん、ストレッチの際に「もっと遠くに伸びるように」と言われて頑張ったりします。けれど、ストレッチを頑張れば頑張るほど、伸ばされる部位に痛みが生じますから、意識は内向きになります。つまりストレッチしながら、どこかで縮こまろうとしているわけです。で、「息を吐いて力を抜いて」が必要になるんですね。
いずれにしましても、ストレッチをする際には、エネルギーは外向きにする必要もなく、むしろ内向きになりやすい。力を抜くことは、エネルギーを内に向かわせないようにすることではありますけれど、外向きにするわけではありません。
ストレッチはあくまで関節の可動域を広げる行為。
で、確かに、広がりますとその分だけ大きく動けるようにはなります。
けれど、ダンスの例えでお分かりいただけたと思いますが、大きく動くことと伸びやかに動くこととは、関係なかったですよね?
ダンスでなくても水泳も分かりやすいかと思います。
泳ぎが上手い人は伸びやかですね。スッーっと真っ直ぐに水中を進むだけでも伸びやかですよね。
これ、ストレッチで関節の可動域を広げたら出来るようになると思いますか?
あるいは例えば、平泳ぎ。手足の関節の可動域が広くても、伸びやかに泳げるわけではありませんでしょ?
伸びやかな泳ぎは、あくまで伸びやかな泳ぎ。
伸びやかな動きは、あくまで伸びやかな動き。
伸びやかな動きを実現するのに、ストレッチがどう影響しているか?
ストレッチがすごく出来たからといって、伸びやかな動きが出来るわけではないということなんです。
繰り返しますが、ストレッチで実現できるのは、関節の可動域を広げること。
私から見ますと、リハビリです。
しかも、これも繰返しになりますけれど、ストレッチではエネルギーが内向きになりやすい。
伸びやかな動きとは、まるで真逆の行為ですよね?
ですから、ストレッチをしていますと、伸ばす動作が出来なくなります。
伸ばすという感覚が分からなくなります。
むしろどんどん縮こまった動作にしかならなくなってくということでもあります。
関節の可動域は広くなり大きくは動けますけれど、エネルギーとしては縮こまっていく。
ですから、ケガもしやすい。エネルギーと動作がチグハグですから。
極端な言い方でしたけど、そういうことなんです。
リハビリとしてのストレッチではなく、動きを良くするためにストレッチをしてもいいのは、伸ばす動作が出来る人に限ります。私はそう考えています。
元々伸ばす動作が出来る人が関節の可動域を広げることで、伸びやかな動きをより大きな動きとして出来るようになるということです。
リハビリ的な意味でのストレッチをするのか? それ以上の目的があるのか?
一度考えてみても悪くはないと思います。