息に声を乗せる
前回アップしたものを、
改めて読み返してみますと、
ちょっと思ったことが伝えられていないと思い、
削除して、改めて書くことにしました。
息に声を乗せる
歌の世界では、よく言われているようです。
芝居のセリフなどでも、同じなんでしょうか?
私は、これは変に意識しない方が良いと思っていたんです。
音圧を重視していたんです。
能の謡の、あの独特な声への興味が強かったこともあり、
「息に声を乗せる」をしている人の歌声とは、
異質だと感じていまして、
だからこそ、余計に吐く息の力ではなく、
共鳴のための圧力に、もっぱら意識を向けていたんです。
それと、
私自身は、お腹(吐く息)の力を
使えていたせいもあります。
ただ、今となっては、
その吐く力と、声帯を振るわせるための息とでは
違いがあったと分かります。
けれど、2~3年前は、よく分かっていなかったんですね。
ですから、
横隔膜を引き上げるように「ハッ!ハッ!」と吐く練習をさせられて、
それを使って声を出すことが、上手く出来なかったんです。
一音一音出すだけなら、ともかくも、
流れがつくれません。
さらに、そうやって作った吐く力は、
声の力にならず、すっぽ抜けてしまう感じに。
横隔膜を引き上げるように「ハッ!ハッ!」と吐くこと自体は、
力強く出来るんですけど、
それと発声とがつながらないわけです。
要するに、残念ながら、私は器用にこなせない。
歌のセンスのある人は、こういったところを
自然と上手く出来るようになってしまうのだと思います。
ところが、このところ
しっくり来るやり方が分かってきたんです。
発声技術は、常に模索してまして、
かなり向上してきています。
けれど、この「ハッ!ハッ!」には、ほぼ手をつけてこなかったんですね。
それが、ふとした別の思いつきから、
結果的に「ハッ!ハッ!」をやってしまう感じになったんです。
そうしますと、「息に声を乗せる」は大事じゃない!って。
現金なものです(笑)
ちなみに、ここで気がついたことは、
やはり、
なんでも一方向だけに力を働かせると上手くいかないのだな、
ということです。
ただ一所懸命に「ハッ!ハッ!」と頑張っているときは、
横隔膜を引き上げるという、上への一方向にしか力を働かせていなかったんです。
本来は、声帯を震わせる力になるのですけど、
私は、そもそも、そこが上手くいっておらず、
さらに、声帯がいくら震えてくれましても、
その音を増幅させる共鳴装置が働いてくれませんと、
音量も音質も上がりません。
こららの問題が、解決する方法を見つけたわけですが、
それは、横隔膜を上へという一方向にしか働いていなかったが故に、
すっぽ抜けてしまっていた力に対して、
音圧を高めるための力を下方向にして、
お互いを出会わせる
というものです。
押し付け合うと言った方が、分かりやすいかもしれません。
(力みではありませんよ)
押し付け合うので、安心して思い切り力を使えるんです。
そうしますと、
より声帯が力まず、柔らかく繊細に変化してくれます。
ですから、低音から高音まで、音程の変化の安定性が高まるんです。
音圧も音質もより良くなります。
また、「ハッ!ハッ!」という瞬間的な力ではなく、
押し付け合い続ける力を使えるので、
持続的な力も、音程に限らず、音圧を高めたまま難なく出来るんです。
しかも、持続的に高い音圧で発声しながら、
「ハッ!ハッ!」という瞬間的な力を加えることも容易に。
以前の、音圧ばかり重視していた時は、
この一息の中に瞬間的な力を小刻みに加えることは、全く敵わなかったんです。
やはり、瞬間的な力に、「ハッ!ハッ!」の力は不可欠ですね。
そうかぁ、息に声を乗せるというのは、
こういうことかぁ。
この状態を作らせようとしていたのだなぁ。
と、2~3年して、ようやく理解出来た感じです。
そこで、振り返ってみますと、
吐く息の強さに頼りすぎている人は、
高音ではどうしても絶叫系になってしまうのが、
分かります。
低音も、ボリュームが出すのが難しいでしょう。
どちらも、音圧を高める技術に、目を向けていないからです。
元々、共鳴が強く働いている人は、
出しやすい音域では、この辺りの苦労はないかと思います。
それでも、より高音、より低音になりますと
やはり、高度な技術を知った方が、
より楽に、より質の高い音になるはずです。
それが達成されますと、出しやすい音域でも、
音の質が上がるでしょうし、
全体として自由度が高まります。
「ハッ!ハッ!」の練習が、ただの練習に留まらぬよう、
音圧の高め方と、さらに、持続的な息の吐く力の作り方を
学べると良いように思います。
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