オペラなど西洋的な発声と、能の謡など和の発声。
明らかに大きな違いを感じますよね。
ところで、
和の発声は、喉を締め上げる? でも腹から? 唸ってる・・・
西洋の発声は、開放的で明るい感じ。頭声・胸声? 腹からではない?
和の発声は、喉声という言われ方をされることもあるようで、けれど、義太夫節の発声法をネットでちらっと調べてみますと、喉を使わないで腹からとあるんですよね。
なんだか、色々複雑です(笑)
まあ、こうして西洋と和とで、大きな違いはあるものの、当然共通のものもあると思うんですよね。
同じ人間の身体で出す声です。それも大きく響く、遠くまで届く声。
誰か特殊な人、一人だけが出来るというものではなく、長い歴史の中で多くの人が、それぞれの人生で長く出し続けてきているわけで、そこに西洋も和もありませんものね。
ただそれにしても、和の発声は、今の私たち(西洋的な歌声に溢れている世界)からは、違和感と言いますか、独特。
私自身、ずっと声を身体に響かせるということで研究してきているんですけど、どうにも和の声の唸るような強さで喋ったり歌ったりは難しいんですよね。。。
で、発声稽古していて思ったんです。と言いますか、ある仮説を思いつきました。
この仮説、私の知る範囲では聞いたことがなく、それでも重要な肝だと思い、結構いけるのでは?(笑)と、ここでお話をすることに。
まず、西洋でも和でも喉を開け、全身縮めることなく声を出します。
ただ、発声の基本・ベースの音が異なる。
それは・・・
西洋では「あ」がベース。
発声練習と言いますと基本、「あ~~~」って出しますでしょ?
もちろん、他の母音もあるでしょうけれど、基本は「あ」。
これに対しまして和の発声、何の音がベースだと思います?
私、思ったんです。
和では「ん」がベース。
「ん」の音を、しっかり強く「ん~~~」って出せること。
これ、実際にやってみて下さい。
結構、難しいと思うんですけど、何が難しいって、喉を締めてしまいやすい。で、音のボリュームも出ない。
なにしろ「ん」は母音ではなく、子音。Nの音。無理があります。
けれど、これを喉を開けて強い音を出せるようにし、その身体と言いますか喉の使い方で、他の母音も発声するんです。
(「ん」は子音なので喉を使えない。これが義太夫節の喉を使わないになるのだと思われます。)
「ん~~~」がそれなりにでも出せますと感じると思うのですが、ものすごく腹の底を使います。圧縮の強さが必要になります。上から下への力ですね。
「ん~~~」は飲み込む。唸りです。絞るような感じです。
一方、西洋のベースである「あ」は、開放的。拡散的。
西洋もお腹を使います。けれど、西洋の場合、イメージ的には下から上へ。一方の和は、上から下へ。
西洋がお腹から出ていくのに対して、和ではお腹に押し込んでいく感じです。
それは発声練習の姿勢にも現れます。
以前少し触れましたけれど、西洋、声楽では立った姿勢で、和では正座が普通ですよね。
お腹に押し込む和の発声は、正座の方がやりやすい。
といったように、同じ大きな響きで遠くへと音を届けるといえど、ベースが「あ」か「ん」かという、全く真逆の性質を持った音ということなんです。
という、仮説を思いついたということ。
力の出し方が、西洋では押し出す方向、和では引き込む方向というのと、発声も同じということになりますから、この仮説、結構いけてるのでは?と思っております。