表現というと、
「自分の中にあるものを出す」
という感じがします。
そのために、
尻込みする人が多いと思うんです。
お芝居的な表現なら、なおさら。
どうですか？
私は、尻込みします（笑）
本当に尻込みする人間だったんですよ。
それが、なぜか
こういった活動をしている…
まぁ、それはそれとしまして、
表現において、
重要だと思いますのは、
「自分の中にあるものを出すのではない」
ということなんです。
あくまで、
「自分を通して出る」
そういったものが
表現だと思うのです。
では、
何が出るのか？
そのひとつに、
「景色」
があると、私は考えています。
山下達郎の歌う「クリスマスイブ」の記事でも
お話しました。
多くの人が
心情に寄り添った歌い方をしてしまうけれど、
山下達郎の歌い方では、
景色が浮かび上がる。
ちなみに、
心情に寄り添うことが
良くないということではありませんよ。
さて、
私は身体表現、身体演技をしているわけですが、
やはり、
景色、風景を浮かび上げることを
重視しています。
その風景が、
表したい心情を、
より鮮明に立ち上げてくれるからです。
例えば、寂しさ。
ただただ、寂しいという気持ちを持って
演じた（歌った）とします。
もう一方で、
凍てつく寒さ、冷たい風、しんしんと降る雪…
といった中に、ひとり佇んでいる。
寂しそうにしている人の周りに、
そんな風景が見えたら、
どうでしょう？
あるいは、逆に、
周りは、明るく賑やか、華やかという
景色が見えるのに、
その中で、寂しそうにしている人がいる。
そんな状況が
思い起こされたら、
どうでしょう？
お分りいただけると思います。
このように風景を生み出すことができますと、
気持ちを、MAXで表現する以上の
深さ、大きさで
届けることができるんですね。
一般的には、
こういった効果を、
音楽や映像、舞台装置などで
補います。
けれど、
身体表現として、
何の装置も使わずに、
身体ひとつでできたら、
どうでしょう？
観ている人にとっては、
なぜ風景が見えてしまうのか？
錯覚が起きた感覚になります。
その実際には見えない風景は
強く、深く
胸に刻み込まれます。
小説を読んでいても、
絵がありありと浮かび上がるものは
いつまでも、
そのとき目にした風景を
覚えているものです。
身体表現でいいますと、
ある方の日本舞踊で、
私は、無いはずの雪景色を見てしまいました。
足首より少し深いくらいに積もった雪、
しんしんと降ってくる雪。
その中を、老婆が歩いている。。。
衝撃でした。
もう２０年近く前のことですが、
今でも、鮮明に思い出されます。
身体ひとつで（歌声で）
景色・風景を生み出すことは
全くもって、可能なことです。
そして、それは気持ちの持ちよう以前に、
技術です。
技術がなければ
生み出せるかどうか、偶然任せになりますし、
それではもちろん、可能性は低い。
表現というのは、やたらと、
「自分の中にあるものを出す」
ものではないのです。
「自分を通して出る」
今回は、景色・風景についての
お話でした。
どうでしたか？
表現…尻込みする必要がないと思いませんか？
いつでも一緒に。
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