先日、ある舞台を観に行き
あらためて考えることがありました。
それは、以前からお話していることですが、
「技術と内容の釣り合い」
です。
観に行った舞台は
『くちづけ～現代音楽と能～』
です。
青木涼子さんという女性能楽師が
（正式には能楽師という言い方ではないかもしれません）
能の音楽性を古典としてではなく、
現代と結びつける試みをされていて、
さらに、
謡の言葉も、
現代の我々に伝わるようにと、
挑戦的な活動をされているようでして、
その最新作となるものです。
「青木涼子さん」インタビュー
『くちづけ～現代音楽と能～』
私は、能の謡の発声に強く惹かれて、
わずかではありますけど、
習ったこともあり、
一方で、能の舞台を観に行っても、
言葉が分からないために、
楽しみきれないという
もどかしさを感じていたものですから、
青木涼子さんの取り組みを知って、
これは観に行かねば！と
大きな期待をしていたわけです。
そこで、冒頭の
「技術と内容の釣り合い」
をあらためて考えた次第です。
今回の舞台は、私にとっては
ひと言でいいますと、
能を謳って現代音楽をバックにした
朗読劇
という印象でした。
節回しのせいもあるのかもしれませんが、
魅力ある謡の発声という感じではありませんでした。
私が魅力を感じるのは、
謡が
華やかさと寂しさ、恐ろしさ
を感じさせてくれるからです。
「あの世」的だからです。
青木涼子さんも十分いい声です。
ただ「あの世」的なものはありませんでした。
また、普通のリズムで語るところも多く、
素晴らしい声をした演劇の方が
朗読劇をしている印象なのです。
そして、言葉です。
例えば、
「敷き布団」
という言葉が出てくるのですが、
こういった日常に密着した言葉を
重々しく言われますと、
「これは、ギャグ？？」
となってしまいます。
表現技術（ここでは発声）は
単に技術ではなく、
表現されるべき世界を内包しています。
例えば、オペラ的な発声で
小さな日常のひとコマを歌っても
おかしいように、
逆に、ポップスの歌い方では
怨念的な内容を伝えられないように。
これは、
身体表現でも同じです。
アートマイム／オーガニックマイムの身体は
小さな日常のひとコマ向きではありません。
もちろん、そこから異世界に誘う意図があれば、
むしろ向いています。
クラシックバレエの身体でしたら
地獄より天国でしょう。
私自身、常に表現技術と内容の釣り合いを
意識していますし、
作品の構造との釣り合いも、重要です。
さて、今回の舞台について
残念だった旨を書きましたが、
それでも、私は凄く可能性があると思いました。
（偉そうですね。
すみません。。。）
謡が言葉を分かるように伝えつつも、
物語ではなく、物語性を持ち、
私たちを自分自身の深いところ、
あるいは、
宇宙の消失点のようなところに
連れて行ってくれる、
それが可能だろうと。
アートマイム／オーガニックマイムが
身体でやっていることを
声でやる
というイメージです。
謡は強い力をもった
発声です。
簡単に身につくものではありません。
青木涼子さんのように本格的に取り組んでいなければ
挑戦すら出来ません。
新しい声の世界、
羨ましいのです。
青木涼子さんHP
