「足の指でしっかり地面を掴みましょう」といったもの、耳にしませんか?
タオルギャザー運動(足の指でタオル手繰り寄せる)は、そのための運動ですしね。
浮き指が良くないというのも、耳にしますね。
ところが、宮本武蔵が「つま先(足の指)は少し浮いている感じが良い」と言っているんです。
本当の生き死にで剣を交えてきた剣豪が、わざわざ書き残している。
また、私の信頼するバレエの先生も、同じことを言っているんですよね。
で、しかもそれが日本での一般的バレエ界では通じづらいとも。
足指で地面(床)を掴むことは本当に良いのか?
疑ってみてもいいと思うんです。
少し前に、和の身体は無線でつながり、西洋の身体は有線でつながっている。
とうお話を以前しました。
無線でつながっているというのは、前提として各パーツがバラバラ、単独ということです。
そうしますと、
和の身体は積み木を重ねて立っているようなもの。
上下の重なり具合のズレは、そのまま不安定さを生み出します。
分かりやすいところで赤ちゃん。
よちよち歩きの赤ちゃんは、非常に不安定。不安定だからよちよち歩き。
積み木の重なりが簡単にズレてしまうんですね。
じっと立っていることが難しいわけです。
だからだと思うんですけど、赤ちゃんの足指はしっかりと地面を掴んでいます。
掴むことで安定を生み出そうとしている。
これは見方によっては、地面に足で「しがみついている」。
例えば、揺れる船の上で立つ時、自然と床を足指で掴んで踏ん張りますけれど、赤ちゃんは自分の体が揺れてしまうので、地面にしがみつかないと立っていられない。そんな感じですね。
不安定だからしがみつく。動きを止めようとする。
そうなんです。足の指でしっかり地面を掴むと、動きを止めること。つまり、動けないようにすることなんです。
和の身体は積み木的であるがゆえに、どうしても、安定を求めてしまう。動きを嫌う。
なんだか、国民性にも表れていませんか?
ちょっと足指から離れますけど、肚が大事だというのも耳にしますよね。
この肚、イコール「どっしり」ですね。そう、安定です。
安定したくて仕方ないわけです。
それはベースが不安定だから。
一方、宮本武蔵やバレエは有線でつながっている身体。
これは、不安定でいられるんです。
各パーツが物理的なつながり方(ここではスプリングでつながっていると想定しておいて下さい)をしているので、積み木的な崩れるような不安定さではないんです。
積み木は崩れるか、崩れないか? 0か100か?白か黒か?のような感じなんですけど、有線の場合は間がある、グレーがあるんです。
動くというのは、不安定ということで、不安定だから動ける。
宮本武蔵は「水を手本としろ」とも言っているんですけど、水ほど不安定なものはありません。
静かにもなれるけれど、基本動くものです。いかようにも形を変化させられるものです。
積み木的な身体とは対照的ですよね。
さて、お話が長くなってしまいますので、今回はもうそろそろおしまいにしようと思いますが、
冒頭の足指が浮いている感じの件
(なぜそうなるのかの詳しいことは拙著『運動センスを一瞬で上げる』で書いてありますので、参考にしていただければと思います)
これは浮かせれば動きやすくなるというわけではないのですけど、流れのある動きをしたい人は、浮いている感じになる身体の使い方に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?