私は元々、身体の使い方が良くはなく、運動神経も良くはなくてですね、
幼稚園か小学低学年か?の頃の映像を皆さんにお見せしたら、それはそれは驚かれると思います。
まぁ、今では考えられない鈍さです(笑)
我ながら、よくぞここまで動けるようになったなぁと、ほんと思います(笑)
だからこそ、誰にでも可能性があると、信じられるわけですけど、あの映像を見たら、みなさん自信持てますよ! 自分の方が、はるかに可能性高いんじゃないかと。
で、ですね、私自身の経験上、身体の使い方を良くしていく上で大事なことは、一にも二にも考え方だと思うわけです。
身体能力ではない。
考え方。
そもそも、自分の身体能力に頼れないわけですから、自分のこれまで持っている考え方を捨てる必要がありますよね。
これが、中途半端に頼れるような身体能力がありますと、すぐに壁にぶつかってしまうと思うんです。
ですから、脚が開く、背中をすごく反らせられるなど、関節が柔らかいとか、脚力が強い、腕力が強いといった筋力の強さが、かえって足かせになったりするんです。
と言いますのは、こういった強みが、どこかの弱みを補ってしまうからなんです。
弱みを補うって、一見、良さそうなんですけど、これが身体を全体的に満遍なく使うところから遠ざけてしまう。部分に頼った動きをしてしまう元凶になるんです。
しかも、こういった補う行為は無意識に勝手に起こってしまうことなので、修正が難しい上に、その補いが起こらなかった場合、今まで何でもなくできていた動きが、全くできなくなるものですから、そのできないという状態に気持ちが耐えられない。で、やはりついつい、補ってしまう。
さて、こうした問題をクリアした上で、どんな考え方をするか?です。
良い身体の使い方とは?に対する答え。これをどうするか?です。
どうも、多くの人が、この答えが曖昧であったり、それはどうなの??というものだったりするような気がするんですよね。
答えが曖昧という中には、肚落ちしていないという意味もあります。頭では理解していても、感情面が追いついていないものですね。
自分の答えになっておらず、他人の答えを取り入れているだけということでもあります。
これ、本人が自分の答えだと思っていましても、そうではないことがあるんですよね。厄介ですね。
ちなみに、私が恵まれていたのは、つまり良い考え方ができたのには、はっきりとした理由があるんです。
それは、一生、アートマイムをやり続けようと思ったから。
歳をとっても、アートマイムをやり続けようと決意していたから。
まぁ、当時は今のように舞台に立つことは全く想定しておらず、大道芸・ストリートパフォーマンスとして続けていくつもりだったわけですけれど、基本的には老いてもやっていくということには変わりありませんね。
これはですね、どういうことかと言いますと、若さに頼って動いていて、それで魅力が出たとしても、そのうちやっていけなくなるぞ!と考えたということなんです。
(消極的ですね 笑)
そしてつまりは、動けなくても表現できる身体にならなくてはいけない!と、心の底から思ったんですね。
この、「歳をとって動けなくなっても」というのが、良い考え方ができたひとつ目の理由です。
ふたつ目は、アートマイムの技法を習得するにあたって、筋力が非常に弱い人間がどうパワーを出して動くか?を考えることが重要だと考えたこと。
例えば、重いものをエアーで持つとした場合、つまり、持っているものを重そうに見せる場合、一般的には重たいフリをしがちなんですけど、私はそうはしなかったんですね。全く筋力のない人が持つとしたら、どんな動き・体勢になるだろうか?と考えるようにしたんです。
もちろん、重いものを持つ動きに限ったことではなく、あらゆる動きをそのように考えるようにしたんです。
このふたつの理由(どちらも筋力が無いという前提に立つということですけれど)、これがアートマイムを一生やっていく上で、切っても切り離せないものであったことが、その後の身体開発を上手く進ませてくれたわけです。
自分語りが長くなってしまいましたけれど、身体の使い方を良くする上で有効な考え方の一つとして、
「筋力のない人が、筋力があるかのように事を成す」
というのは、オススメです。
私のよく言う「エネルギーが通った動きは気持ちが良いから、通せたかどうかは自分で分かる」というものも、決して気持ち良く動くことが重要ということではなく、「筋力のない人が、筋力があるかのように事を成す」動きを研究していった結果、たどり着いたものであり、結果そうなるというだけのことなんです。
気持ち良さを目指しますと、違う方向へ行ってしまいかねないと思います。
私の考える良い身体の使い方とは、今回お話したようなものですから、武術に代表される和のものであったり、スポーツに代表される西洋のものだったり、どちらかに偏ることなく、どちらも重要な身体の使い方として扱うのは、ごく自然な流れなんです。
扱っているのは、「人間」ですから。
良い身体の使い方とは?に対して、どのような考え方をするか?
バレエの方が武術的なものを良しとしたのでは、上手くいきません。逆も然りです。
漠然と良いものとして見るのではなく、自分の答えを明確に持つ必要があります。
曖昧なままでは、たどり着けるところも、それなりのところ。
自分の身体を見つけてもらえたらと思います。
次回公演は12月13日(金) 大型企画です!!