マイム作品を作る上で、気を付けなければいけない大事なことがあります。
ひと言でいいますと、
「ストーリーに焦点を当て(させ)ない」
これは、作っている本人は、例えば、何か面白い筋のものを思い付き、ギャグ仕立てにしようとか、不思議な世界に仕立てようとか、あるいは感動させようとか、何かあったとしましょう。
その際、そのストーリーの流れがきちんと伝わりませんと、
ギャグが通じません。不思議な世界ではなく、ただ訳が分からないことをやっているだけになってしまいます。感動のしてもらいようがないのです。
マイムはストーリーを伝える道具としては、非常に非力なんです。
情報量の少ないマイムで伝えられるストーリーは、伝わったところでたいしたものではありません。
言葉の力を使った方がいいんです。
といって、ストーリーが必要無いか?と言いますと、そんなことは、もちろんありませんよ。
ストーリーが必要であるとか、必要でないとかいうことではありませんで、
ストーリーや状況が分からないと楽しめないものの場合、きちんとそれを伝えなければいけないということなんです。
人がただくしゃみをしても、面白くないですけれど、風邪の診察をしている最中のお医者さんだったとしたら、面白いかもしれません。
こんなときに、このくしゃみをしている人は、誰っていう設定なんだろう?どんな状況なんだろう?
と考えさせてしまうようでは、楽しめないと思いませんか?
まぁ、これはごく簡単な状況設定ですから、それくらいは分かっているよ、出来ますよ、と思われるかもしれませんけど、
この手の作品、多いんですよ。
「あれっ?ここは部屋の中ではなかったのかしら?」
「えっ!?それは誰?誰?別の人が出てきたの?それとも、同じ人が変身したの?えっ?えっ?」
「さっきのは夢だっということ?思い出していたということ?どっちなの?まさか、未来を想像していたとか?」
マイムを観に行って、こんな経験された方多いんじゃありません?
(って、私がいつも味わってるんですけどね・・・)
「ストーリーに焦点を当て(させ)ない」といいますのは、
観ている人にストーリーを追うこと、状況を理解することを一番の目的にさせてしまわないように、
ということです。
出来るだけストーリーや状況の理解に、頭を使わせないような作り・構成にした方がいいということなんです。
それは別の角度から見ますと、
ストーリーや状況が正しく理解されなくても、伝えたいものが伝わるのであれば、
それはそれ以上、変に詳細にストーリーを分からせるためのものは必要無いとも言えるわけです。
もちろん、どんな人を対象に作品を作るのか?によりますから、正解があるわけではありませんけれど、
大事なことは、そのストーリーや状況を通して、
何を感じ取って欲しいのか?どんな空気を作りたいのか?
そして、本当に伝わるのか?
自らの熱い想いや、演技時の内面作りだけでは伝わらないかもしれない
と、思っている方がいいと思うんですよ。
熱い想いと同じくらいの冷静さが必要なんです。
お互いがんばりましょうね。