オーガニックマイムJIDAI の「身体」「表現」考

オーガニックな身体の使い方、表現についてのいろいろ。時々、甘いもの。

屈曲動作と伸展動作と身体表現

屈曲動作伸展動作という言葉をお聞きになったことはありますか?


常歩(なみあし)身体研究所」でキーになっている言葉なんですけど、
詳しくはそちらのページをご覧いただくとしまして、
http://www.namiashi.net/ (常歩身体研究所
オーガニックマイムもJIDAIメソッドも、私が土台としている動作は屈曲動作なんですね。


私がこういったお話をネット上に挙げるようになりましたのが、2005年だと思うのですが、
当初は何をお話したら良いのか全く分らず、一番最初に取り上げました話題が、
オススメの本として「スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと」だったんです


この著者の小田伸午氏が「常歩(なみあし)身体研究所」の主要メンバーですから、
私の動作も自ずと研究所がおススメしている屈曲動作になっていくのは当然なんですね。


ただ、ちょっと違いますのが、
マイムという表現の分野であることから、伸展動作も見せる必要があるということなんです。



ところで、屈曲動作と伸展動作を、単に見た目の動き方の違いとしてしまいますと
ちょっと分りづらい話になってしまうと思いますので、
私の言葉に置き換えてお話を進めていきますね。



伸展動作といいますのは、これは重力に反発しようとする感覚なんですね。
例えば、歩く、走るで、「地面をしっかり蹴りましょう」というタイプですね。
ですから、「腕をしっかり振りましょう」も仲間ですね。
一般的な動作ですから、これを読んで下さっているほとんどの方は、特別な動き方ではなく、
ご自分の動き方だと思って下さって大丈夫かと思います。


一方、屈曲動作といいますのは、重力を活かす感じなんですけど、
私の感覚では浮遊感覚といったほうが良いように思います。

浮遊といいますのは、空気でも水でもいいんですけど、何かに支えられて浮かんでいる状態ですね。
ですから、浮いてはいるものの、重さを感じているといった感じなんです。
浮揚のように浮かび上がるわけではありませんで、
伸展動作の感覚しか無い場合は、浮遊と浮揚との違いは分りづらいかもしれません。


よく良い姿勢のために、「頭から糸で吊られているように」といったことが言われますけれど、
一般的な伸展動作感覚に従ってしまいますと、
下から上に伸び上がるような感じになって、首に力が入ってしまいやすいんですね。
「吊られて」が浮遊ではなく、浮揚になってしまうんです。


私も昔はそうでしたから、よく分ります(笑)



もうひとつ分りやすい例を。
スポーツの分野では、よく膝を柔らかく使えというようなことが言われますけれど、
伸展動作感覚ではどうしても、自分で膝を曲げる伸ばすということになってしまうんですけど、
屈曲動作感覚、つまり浮遊感覚の場合は、単に支えを瞬間的に外すような感じになるんです。



で、身体表現ですけれど、一般的に格好良く見えるのは、伸展動作なんですね。
バレエを想像していただければ分ると思います。
体中伸ばして伸ばして、ジャンプ!ですものね。
曲げて曲げて、どすん!は格好良くないですよね(笑)



では、どうして私はこの屈曲動作、浮遊感覚を土台としながら、
身体表現をしているのかといいますと、それは実は伸展動作は重く見えてしまうんです。
伸展動作は重力に反発しようとしますから、動きのたびに地面を蹴らないといけないんですね。
そうしますと、足取りなんかが重くなってしまうんですね。


要は、重い体を筋力で持ち上げようというわけですから、
瞬発系の筋力が強くありませんと、軽やかに動けないんです。


瞬発系の筋力といいますのは、大雑把にいいますとアウターマッスル。
鍛えやすいけれど、衰えやすい筋肉。
頑張り甲斐がある。けれど、疲れやすく、頑張りが必要。
年齢に抗って鍛え続けませんと、あっという間にパフォーマンスが落ちてしまう。
けれど、いかにも!な凄いことはしやすいかも。


まぁ、ひと言でいいますと、私は余計な頑張りはしたくないんです。怠け者なんですね(笑)



で、この感覚を土台としながら、やはり見栄えの良い伸展動作を見せるわけなんですけれど、
これは、実は見栄えの良さというだけでなく、
一般的な身体感覚は伸展動作なものですから、
伸展動作をしませんと、例えば、力を入れているという感覚が伝わらないんですね。


屈曲動作といいますのは武術の達人のような、力感の無い動作なものですから、
そのままでは何だか全く分らないんですね。
古武術で有名な甲野善紀氏、その動きをアニメにしたら、
手抜きのアニメになってしまうということを、宮崎駿監督が昔言っていましたけれど、
そういうなことなんです。


表現として、人に見せるということは、
その見る人の身体感覚を無視するわけにはいかないんです。



ただ、ここが重要なんですけど、
身体表現として見せるのは伸展動作だとしましても、
中味が屈曲動作、浮遊感覚でいることで、
普通であれば力むことでしか表現出来ない力感を、
力むことなく伝えることが出来るようになるんです。


そして、何より重要なことは、
動作自体は普通の動作でありながら、一般的な身体感覚では捉えられない、
(体に無理のかからない)動作理論で動いていますと、
見ている人は、何が違うのかは分らないけど、何か違うということが伝わるんですね。
しかもそれは、潜在意識下で心地よさを感じるはずなんです。



いずれにしましても、
屈曲動作を身につけつつ、伸展動作での美しさも身につけていくことが、
身体表現を奥深いものにするキーだと思っています。






マイムから心と身体の平和を


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