オーガニックマイムJIDAI の「身体」「表現」考

オーガニックな身体の使い方、表現についてのいろいろ。時々、甘いもの。

身体表現と呼吸~浅田真央選手とキムヨナ選手の違いも含めて~

身体運動表現ではなく、身体表現をしようという者にとって、
呼吸の扱い方は大きく2つのポイントがあります。

1つは生命を維持するための呼吸

もう1つは表現のための呼吸



では、まず1つ目の生命を維持するための呼吸ですけれど、
これは表現内容とは無関係に、ただひたすら生命維持のための呼吸なんですけれど、
もちろんこれも表現のために必要。
といいますのは、この呼吸で大事なことは

”呼吸による胸郭の動きを隠す”ことにあるからなんですね。

それはイコール、
表現に影響を与えないように、呼吸していないように呼吸することになります。


例えば、全力疾走をした後は、一般的には肩で息をしますでしょ?
けれど、身体表現の際にはどんなに疲れていても、
平然ととしていなければならないことは多いですから、
そんな時には肩で息をしたくはないわけですね。

どうするか?

・・・肩や胸を動かすことなく呼吸をするんです。

これはお腹だけが動く形になりまして、
もちろん、呼吸していること自体は裸であれば分かりますけれど、
それはあくまで生身の人間としての呼吸であって、
舞台上の人物としての呼吸ではないものとして、観客の側は見てくれるんですね。


もちろん、本当はハァハァしたいのに、
胸の動きを抑えてしまいますと、当然呼吸しづらくなりますから、
胸を動かさないでも、相当な量の呼吸が出来るようになっていませんと、
簡単に素の自分の呼吸が出てしまうようになる。
かっこいいものではありませんね。


つまり、身体表現をしようという者にとって、
呼吸の扱い方の1つ目の大事なポイントは、

生命を維持するための”素の自分の呼吸を隠す”

ということ。



では、例えば、逆に本当の自分は疲れていないのに、
疲れたように見せるには何が必要か?と言いますと、
肩で息をすることになりますよね。

ところがこれは、ただ実際の呼吸をハァハァしたくらいでは、
意外に肩で息をしているようには見えてこないんです。

それに、実際にハァハァしますと、
それが素のその人の呼吸なのか、
舞台上の人物としての呼吸なのか
とても分かりづらくなってしまいます。

で、大抵は故意に肩を上下させてしまったりするわけですけれど、
実際に疲労が激しくて肩で息をしている時というのは、
胸を動かすために肩も少し動いているだけですから、
肩を上下させるという意識では、ジェスチャーにしかならないんですね。

胸をしっかり大きく動かす必要があるんです。
(胸としてしまいますと、どうしても前側だけな感じがしますので、胸郭とした方がいいですね。)

胸郭を大きく動かすというのは、これも意外に難しくてですね、
本当は疲れていない時に一生懸命ハァハァしたくらいでは、思ったほどは動かないものなんです。
ですから、胸郭の動きに意識を置いた訓練をしておくんです。


これが2つ目の表現のための呼吸なんですけど、
言い方を変えますと、それは

舞台上のフィクションの人物としての呼吸

ということになるんですね。


疲労だけでなく、多くの感情、内面的なものは呼吸との関係が強い
(元気な時は胸が張り、弱っている時は胸に力がなくなるなど)ですから、
呼吸による胸の動きが素の自分ではなく、舞台上の人物としての表現につながるということです。

ですから、胸が固い人は舞台上の人物としての感情、内面が動いていないに見えてしまうんですね。

私がよく例に出しますフィギュアスケート
浅田真央選手がこの胸が固いタイプで、キムヨナ選手が柔らかいタイプです。

ただ気を付けないといけませんのが、胸の動きを出そうとするあまり、
腰まで一緒に動いてしまいますと、いやらしい感じになってしまうんです。
いやらしいといいますのは、エッチなということではなく、下品な感じですね。

イメージとしましては、
背骨は動かさずに胸郭だけが動くようなものが理想と言えばいいでしょうか。



まとめておきましょうね。
身体表現にとっての呼吸の扱い方は、
このように生命を維持するための呼吸という素の自分の呼吸と、
表現のための呼吸、イコール舞台上のフィクションの人物としての呼吸とを、
明確に分ける必要があるということです。


ここが曖昧になってしまいますと、
観客としてはフィクションの世界に入り込めず、
演者を舞台上の人物として楽しめばいいのか?
それともその人が頑張って演じている姿を楽しめばいいのか?
という感じになってしまうんですね。

先ほど例に出しましたフィギュアスケートですけれど、
浅田真央選手は私たち観客をフィクションの世界に連れて行ってはくれませんでしょ?
本人が頑張って演じている姿を、私たち観客は楽しみ応援しているわけです。

一方、キムヨナ選手の場合は、本人が頑張って演じている姿を、
私たち観客が楽しみ応援しているわけではなく、
フィクションの世界の人物としてのキムヨナ選手を楽しんでいるわけです。


呼吸の話になりますと、すぐにどんな呼吸法を練習したらいいのか?
のような話になりやすいですけれど、表現の場から言えますことは、
それはそもそもの視点がずれているということになります。
腹式でも胸式でも、逆腹式でも、丹田呼吸法でも何でも、
表現に応じて自在に自然に使い分けられるようでなければ、ということになります。

そして、最後に。
身体表現における呼吸というものが、
このように胸の動きの柔軟性とは切っても切り離せない関係にありますから、
体幹の鍛え方にも注意が必要でして、
下手な体幹の鍛え方をしてしまいますと、胸の柔軟性が損なわれてしまいます。
つまり、表現力が低下してしまう。


何のために呼吸の練習をするのか?

どのように呼吸の練習をするのか?


大事にして下さいね。





Body,Mind&Spirit 本当の自分の身体は天才だ!




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