結果から原因は生み出せない。
前回、構成の大事さをお話しましたけれど、ここに別の落とし穴が待っています。
大きな大きな落とし穴
・・・であるにもかかわらず、気がつきづらい落とし穴。
「構成がよく出来ていますと、内容が薄くても、楽しめるものになります。」
憶えてらっしゃいますか？
端的に言いますと、構成の力で多くの人が楽しんでしまえる作品になっているだけにもかかわらず、
内容まで素晴らしいものであるかのように、勘違いしてしまう。
そんなことが起こってしまうんです。
喩えて言うならば、
商品はたいしたことないのに、宣伝が上手で売れてしまう。
そんな感じですね。
売れれば勝ち。売れるものが良い商品。
そんな考え方もあるでしょうし、それはそれで真理を突いている面もあるとは思うんです。
ですから、内容が薄いかどうかも、楽しめるかどうかに比べれば、大きな問題ではない。
そんな考え方もできます。
どんなスタンスで作品を創るのか？は、非常に重要ですね。
さて、前回、「構成というのは、内容を浮かび上がらせるもの」というお話をしました。
そして、「内容がどんなに良くても、構成が悪いと伝わらない」というお話もしました。
構成と内容というのは、密接なつながりがあるわけですけれど、私はこう思っているんです。
構成は内容のために存在する。
いいかえますと、
内容が薄いことを、構成で補ってはいけない。
あくまで私のスタンスです。
構成を考えるというのは知的な作業ですから、良い構成（パターンなど）の知識に長けていますと、
つい内容を補う方向に、その知力を使ってしまいます。
けれど、良い構成といったものは、良い作品を分析した結果、導かれたものなんですね。
当然、良い作品というのは、内容が濃いものですね。
ここ、落とし穴。
結果から原因は生み出せない。
原因といいますのは、内容。内容の深さ・濃さです。
マイム作品を創るうえで、最も重要なのは内容の深さです。
内容の深さとは、
作者の持つ悲しみ、怒り、喜び、驚き、希望、辛さ、可笑しさ、嘆き・・・何でも。
どれだけ自らの心の底から感じられているかどうかです。
これらが浅ければ、どう構成しても、所詮、構成の力で見せているだけのものになってしまいます。
構成というのは、
これらの深さを深さとして扱いつつ、
他人が受け入れやすい形にするものなんです。
この深さは、作者自身のものですから、そのまま出したのでは、相手は引いてしまいます。
（剥き出しのままがいいという人もいますけど・・・）
前回もお話しましたが、「自分で作品を創る場合、内容というのはイコール、本人の思いになります。
そのため、陥りやすいのが、内容が伝わらないのは自分の表現力が足りないからだ、
と考えてしまうこと」で、深ければ深いほど、こうなりがちなんですね。
けれど、深ければ深いほど、構成という知的なところに力を注ぐ必要があるんです。
作者自身のものである深さを、
受け手のものにしてもらえたとき、
初めてその作品は成功したといえるのではないか？
そう思うんです。
この構成と内容の関係は、個人の表現力にもいえます。
構成といいうのは、身体の使い方。知的なもの。
内容は、内面。心のもの。
表現力をあげるために、身体の使い方は重要ですし、大きな力になります。
けれど、それは内面あってこそです。
内面をしっかりプレゼンテーションするために、身体の使い方というものがあるんです。
表現すべき内面がなければ、身体の使い方、それは運動能力に過ぎません。
内面ばかり強くても、身体の使い方が悪ければ、それは思い込みに過ぎません。
身体の使い方から表現を生み出してはいけません。それは、マイムではありません。
但し、きっかけとするのは、むしろ推奨します。それが身体から生み出すということ。
構成から、作品を創ってはいけません。
それは、創るではなく、造るです。
内容が構成を支配するように。
良い構成が、人の心を動かすのではありません。
人の心を動かしたものが、良い構成です。
さて、
マイムには作品を創るという作業が存在します。
自らの心の底から感じられる、
悲しみ、怒り、喜び、驚き、希望、辛さ、可笑しさ、嘆き・・・
そういったものと向き合い、作品として昇華させること。
それは、他には代え難いものではないでしょうか？
5月28日 『声（音）を体に響かせる〜身体感覚を磨く 第5回』
5月14日 『JIDAIソロ作品上演』
7月開講 『アートマイム塾〜シアターカイ本物の俳優修業シリーズ〜』
Body,Mind&Spirit 本当の自分の身体は天才だ！
