「立甲」
という言葉を聞いたことがあるでしょうか？
「りっこう」と読みます。
肩甲骨が立つということなんですけど、
私たち人間は背中側に肩甲骨が２つ、並んでついているんですね。
けれど、４つ足の動物は側面についていまして、これが肩甲骨が立っている状態。
人間が四つん這いになりますと、普通は２つの肩甲骨が地面と水平に並びます。
それが、人によっては動物のように地面と垂直になるんです。
肋骨の側面のほうで２つの肩甲骨が向かい合うような。立甲です。
４つ足の動物はなぜ立甲なのか？
それは、そのほうが体を支えやすいから。
詳しくはともかく、
体の中心の力を、効率良く手足の末端に伝えるため
なんですね。
で、これは４つ足の状態でなくても、私たち人間が立った状態でも、
手先に効率良く力を伝えるためには、同じことがいえるんです。
投げる、打つ、叩く・・・
スポーツはもちろん、楽器演奏でも料理でも何でも。
効率良くといいますのは、つまり無駄に腕・肩の力を使わないということ。
脱力とかリラックスがしやすくなるということなんです。
私もここ１、２年は立甲を意識的に指導したりしています。
ただ、私自身は立甲を意識して身につけたわけではないんですね。
立甲という概念を知った時には、もう出来ていたんです。
これは、自慢ということではなく、非常に重要なポイントなんですけど、
立甲が出来ることを目的としてはいけないんです。
変な言い方ですけど、立甲は出来なくてもいいんです。
私のお話になってしまいますけれど、
もともと、肩甲骨の役割はもちろん動き方すら知らないときから、
漠然と、肩甲骨はよく動いたほうがいいだろうなという意識はありまして、
それなりのことを勝手な方法でやっていたんですね。
あとは、マイムの様々な動きを研究していくなかで、
腕・肩を力ませないことも重視していたんです。
で、それが、結果として立甲になっていて、立甲の言葉を知る以前から、
ときどき生徒さんから
「JIDAIさんの肩甲骨が凄いことになってる！」って言われて
「ん？そうなの？？？」と。
何しろ、自分では見えませんものね（笑）
何が言いたいかといいますと、大事なことは、
腕・肩を力ませないで体の中心の力を手に伝える精度を上げたら、
自然と立甲するしかなくなるであろう、ということなんです。
逆にいいますと、
立甲が出来ても、腕・肩が力んだままで、手に効率良く力が伝えられないということがあるんです。
ですから、立甲を目的としないように、ということなんですね。
さて、ついでにお話しますと、立甲のもう１つの大きな目的、それは、
背骨をフリーにすること
なんです。
で、さらにいえば、そのことで、
”結果として”、
環椎後頭関節（頭と首の接点）の自由度が高まる、後頭下筋群のフリー度が高まるんです。
（アレクサンダーテクニークでは、とても重視しているポイントのようで、非常に共感できます。
ただ、私の考え方では”結果として”に重きを置いています。）
なんだか、聞き慣れない言葉がぽろぽろっと出てきましたけれど、結局のところ、
手先へ力を伝える際に、立甲などによって背骨がフリーでありますと、
無駄無く（大きな）力を伝えることができるだけでなく、
全身がリラックスしやすく、頭も明晰に働きやすいということ。
なんだか、結論が突飛になってしまいますけど、今回は大枠で捉えていただければと思います。
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