「呼吸が大事」とは、どなたも口にする言葉ですけれど、
どんな風に大事にしているのか？となりますと、人それぞれ。
というように・・・
同じ言葉が、同じ意味を表すわけではない。
これは、何かを学ぶ際、非常に重要なことだと思うんです。
自分の先生・師匠の使う言葉を本当に理解できているのか？
AさんとBさん、同じ言葉を使っていたとして、同じ意味なのか？
私は、
実現できていることが違うのなら、
その言葉は同じ意味ではない
と考えています。
舞台表現の場では、よくこんな言葉が出てきますね。
「丹田」「真実」「瞬間瞬間を生きる（今を生きる）」「呼吸」「もう一人の自分」
「技術・形ではない」「内面」「世界を立ち上げる、世界に巻き込む」「自然」・・・などなど
学び手としては、師匠の語るこれらの言葉を、どう捉えるか？
あるいは、
同じ舞台表現をする者同士で、お互いがこれらの言葉で話していて、
それは本当に通じ合っているのか？
これらの言葉は、抽象的であるがゆえに、誰でも分かった気になりやすい面がありますよね？
冒頭に挙げましたけれど、「呼吸が大事」なんていいますのは、
表現にかかわらず、どなたでも知っていて、けれど、どんな風に大事にしているのか？となりますと、
人それぞれになってきますでしょ？
例えばですけれど、マイムにおいて私のいう「呼吸が大事」を、ある程度理解できるまでに、
クラス生ですら数年はかかります。
みんな、それぞれ自分なりの解釈をして稽古を積みながら、
ある時点で、「今まで分かってなかったんだ」ということが分かり、
その解釈に安心して稽古を積み、またある時点で、
「分かったと思っていたんだけどなぁ。。違っていたのか。。」ということが分かる・・・
そんなことの繰り返しです。
それは、もちろん私からは分かります。まだ分かっていないなと。
なぜなら、実現できているものが違うからですね。
つまり、
仮にどれだけ言葉で分かったようなことを言えたとしましても、
実現できていないなら、何かが違う。
武術系、ボディワーク系の方がよく使う言葉で「筋力ではない」「脱力」というのがあります。
（私も使います）
これは、非常に危険な言葉です。
これらの言葉を自分なりの解釈で、気持ちが楽になってしまう人がいますけれど、
その言葉の下で発揮されるパフォーマンス達成度が、その武術家・ボディワーカーと異質であれば、
それは、その言葉を理解できていないということです。
（そんなこともあって、私は最近、「張力」という言葉と組み合わせて使うようにしています。）
言葉には限界があります。
とくに抽象度の高い言葉は、扱いに細心の注意が必要です。
特に、そんな言葉の中でも、神秘性を含む言葉、人を酔わせる力のある言葉は、
安易に分かってはいけないと思うんです。
真意を探らなければいけない。
仮に、私が自分の表現、アートマイム、オーガニックマイムの舞台を踏んでいるとき、
それは、「宇宙を動かしているのだ」と言ったとしましょう。
私自身の表現力を一旦横に置いておき、この宇宙が
「存在するあらゆるものの意識の影響を受けている」といった話を前提とするなら、
私の表現が宇宙を動かしていることは、ごく当たり前ですよね。
それは、あなたが今、私のこの記事を読んでいること自体で、宇宙に変化が起きていると考えるのと、
変わりありませんものね。
記事を読むことに比べ、舞台表現は強いパワーでしょうから、
かなり宇宙を動かせているかもしれません。
しかも、実際問題としまして、私はそれくらいの
（宇宙という名の下、時空や人の意識を動かそうという）意識で、
作品を創っていますし、身体エネルギーも同じ意識で訓練を積んでいます。
ですから、私のアートマイム、オーガニックマイムの舞台表現は
「宇宙を動かす表現です」と言えなくはないわけです。
けれど、もちろん、そんな言い方はしてきていません。
良くも悪くも、誤解を招きます。
こういった言い方をするほうが、神秘性があり、スピリチュアルで、高尚で・・・
気持ちが大きくなって、小さな自分を忘れさせてくれて、
このマイムに憧れをもってくれたり、ありがたがったりしてくれるかもしれません。
けれど、それは正しい見方とは思えません。
・・・なんだか大袈裟な話になってしまいましたが、
「丹田」
なんていう言葉にも、同じニュアンスが含まれますね。
安易に「丹田」なんて、普通は使えないと思うんです。
そもそも、分った気になれないと思うんですよね。
何かを学ぶ際には、
指導者の使う言葉に対して、どんな意味で使っているのか？
に思いを馳せる必要がありますし、
その指導者が、どう体現しているのかを見極めることも、重要です。
その指導者は、どうその言葉を体現しているか？
また、表現者同士でも、同じ言葉で、全く違う内容を語っているのではないか？
自分はどう体現しているのか？
別の表現者はどう体現しているのか？
常に、そういったことに注意を向ける必要があります。
自分の理解に言葉を引き寄せてしまうのではなく、
相手の言葉に入っていけるように。
８月１４日 『動作塾』
９月１５日 『刀の扱いから、身体の使い方とエネルギーの伝わり方を学ぶ』
１０月６日 『刀の扱いから、身体の使い方とエネルギーの伝わり方を学ぶ』
Body,Mind&Spirit
本当の自分の身体は天才だ！
