発声ですと分かりやすいのですけど、動きであっても、
自分がどんな声になるのか、どんな動きになるのか？を
あらかじめ決めてしまわない
って、意外に大事なんです。
まず声のお話から。
発声のワークを提供し始めてからもう10年くらい？
当初から、身体の使い方によって出てくる声を大事にしてもらっているんですね。
ですから、ワークでは、その人の普段の声の出し方が出てきてしまわない方法を
多く採用しています。
その結果、思ってもみなかった、本人もビックリするような声が出るんです。
この時の発声は、無理のない自然なもの。
当たり前ですよね？
身体の使い方を優先させての発声ですから。
その人が、自分の思う声を出そうとしてしまいますと、
大抵の人にとっては、身体の使い方としては、どこかに無理があったり、足りなかったするんです。
これは、言い方を変えますと、
「自分で自分を枠にはめている。」
ということになります。
で、動きも同じでして、
動きという言い方ではなく、力の出し方という言い方で考えた方が分かりやすいかましれませんが、
何かを押すとか、持ち上げる、あるいは引っ張るといった時、
自然とその人が力の出しやすい姿勢で動きます。
当たり前ですね。
けれど、その身体の使い方は、やはり大抵はどこかに無理があったり、足りなかったするんです。
最適な動きが出来る人なんて、そうそういません。
そこで、動きのレッスンを受けたとしますと、どれだけ身体の使い方の説明を受けても、
無意識に自分の力の入れやすい形にしてしまう。
そうなりやすいんです。
それでは、ワークを受ける意味が無いと思いますでしょ？
こうして、文章で読んでいると、簡単にそう思えると思うんですけど、
実際にその場に立ちますと、気がつかないものなんですよね。
なにしろ、“無意識に”自分の力の入れやすい形にしてしまうわけですから。
声にしましても、動きにしましても、
やはり出来ないのは避けたい。出来るようになりたい。
その「出来る」でいたいがために、つい自分のやりやすい慣れ親しんだ身体の使い方にしてしまう。
結果が分かっている身体の使い方を選んでしまうわけです。
“無意識に”ですよ。
今の自分に満足しているのであれば、全く構わないのですが、
そうではないから、あるいはもっと良いもの、別のものを期待しているからこそ、
この手のワークを受けるんだと思うんですね。
であれば、一旦、今の自分を手放す必要がある。
やりづらくても、指示された身体の使い方で、結果を出そうとすることで、
新しい回路が開けます。
それは、身体が本来持っている自然なもの。
今までのその人にとっての「自然」は、単に慣れ親しんだものであって、
不自然であることに気がついていないだけなんです。
一時の出来ない自分に耐えられるかどうか？が鍵ですね。
耐えられない人は、いわゆる筋トレ・ストレッチで、
今の延長線上での上達に。
一方、こういった、自分がどんな声になるのか、どんな動きになるのか？を
あらかじめ決めてしまわないことで出てくるエネルギーを掴もうとするのが、
今の次元を越える上達の道。
先日の（難易度の高いタイプの）声のワーク参加の方（声楽をされている方）が、こんなことを。
「良くない姿勢なような気がしたけれど、その姿勢で声が出た時の感覚が、
歌っているときに凄く良い声になった時の感覚だった！」
そう、人によっては、良い状態って、偶然何度かは体験しているものなんですよね。
ただ、それを再現出来ない。
ちなみに、この方、
「全くもって思うようにできないのになぜかとても面白がっていられたのは、
自分にとってとても大切なことがあちこちに見えたような気がしたから」
とのことでした。
自分の頭の声よりも、身体の声・感覚を大切にされていたということですね。
今の自分から一時、離れて、ご自分の身体が持っている本来の天才性を掘り起こすって、楽しいんですよ。
新著
●第１章 バネを利かせる！ 地面反力
●第２章 敏捷になる！ 股関節の抜き
●第３章 腕に螺旋エネルギーを通す！
●第４章 脚に螺旋エネルギーを通す！
●第５章 触れ方の質を上げる！
●第６章 想いを伝える、届ける！
●第７章 日常生活で動きの質を上げる！
次回アートマイム公演 3月27日
