動く際に、何が重要か?
ここを押さえておくかどうかで、日頃のトレーニングやエクササイズの意味が随分と変わってきてしまいます。
多くの人がストレッチや筋トレ、それに似たものをしてしまいますけれど、何を意識して取り組んでいますか?
重要なのは、「関節のあそび」に対して意識を向けること。
車のハンドルでも自転車のブレーキでも、ネジとドライバーの関係でも、全て「あそび」がありますでしょ?
全く隙間がなく、力を加えたらそのままダイレクトに働き出すわけではありません。
少し力を加えた後に、「今!」という瞬間・手応えがあって、力が伝わっていきますね。
この「今!」を捉えることが、身体を動かす際に、非常に重要なんです。
私の専門であるアートマイムには「インパルス」という技法がありまして、その一つに、まずは舞台に立っている間中決して消してはならない、「最低限のインパルス」というものがあるんです。
これは、身体中の「関節のあそび」を、最低限無くしておくというもの。
簡単に言いますと、全身をひとまとめにしておく。全身をひと繋がり状態にしておく。ということなんです。
あそびにも段階がありまして、完全にあそびがない状態は、強い打撃を加えるなどの本当に瞬間的に必要な状態であって、最低限のインパルス・あそびが最低限ないと言いますのは、連動性を生み出すのに必要な状態になります。
つまり、あそびがないと言いましても、この完全にない状態から、最低限までの間に幅があるというわけです。
そして、まずは何より、あそびが最低限ない状態を作ること。
それが「今!」を捉えることになり、連動性・協調性を生み出す必要条件になるんです。
逆に言いますと、「今!」を捉えることなしにトレーニングやエクササイズの類をやり続けていますと、動きは劣化していきます。
劣化すると言いますのは、身体に本来なら不必要な負荷をかけて動くようになっていくということです。
トレーニングやエクササイズによって、一見よく動けるようになったと感じるかもしれませんけれど、動きの質としては下がっているわけです。
と、断定はできませんけど、そういう考え方を私はしているということ。
そういうこともあって、以前から「運動は身体にいいですよね?」に対して、「そうとは言えない」といった態度でいるんです。
また同時に、趣味でクササイズをしているなら、それは動きの質を上げることとは関係なく、決して悪いことではない、むしろ楽しいわけですから、それはそれ。他人がとやかく言うことではないとも言ってきています。
さて、筋力が上がらずとも、柔軟性が上がらずとも、「今!」を捉えられるようになるだけで動きの質は圧倒的に変わります。
人生観すら変わります。
人生観を変えるために取り組む必要はないのですけど、それくらいに単に肉体的なことではないということなんです。
過去に引きづられ、未来に心奪われる。そういったことではなく「今」に目を向けるということを、観念的ではなく実際に行う。それを続けていて、モノの見方・考え方に影響が出ないわけがありませんでしょ?
この「今!」に取り組んでいつまで経っても出来ない場合、それは肉体的な問題ではなく、モノの見方・考え方が変わらない、頑固なまでに過去の自分にしがみついているともいえるわけです。
動くって、面白いと思いませんか?
本年もよろしくお願い致します。