オーガニックマイムJIDAI の「身体」「表現」考

オーガニックな身体の使い方、表現についてのいろいろ。時々、甘いもの。

マイムテクニックの使い方

マイムの「カベ」に代表されるイリュージョンテクニックって、使い方が難しいんですよね。


これは作品の構成の上でも、技術面でも、どちらも繊細な問題なんです。


構成面では、例えば、


「どうしてそこで壁に触る必要があるんだ?」


で、触る必要があるのなら、


「どこを触るんだ?」


「何回触るんだ?」


そして、技術的には


「どう触るんだ?」


となるんですね。



イリュージョンテクニックは気を付けませんと、単なる説明的な動作になってしまい、
無機質でどこか滑稽味を帯びてしまうんですよね。


例えば、気持ちの落ち込んだ人という設定で、「カベ」をぺたぺたやり始めたら、
笑っちゃいません?
観客としては、シリアスな気持ちでその設定に向き合えませんでしょ?



人を笑わせるためのコミカルなマイムでしたら、いいのかもしれませんけど、
そうでない場合(私はいつもそうでない場合なんですよね。。。)、本当に危険。
作品の雰囲気が台無しになってしまいます。


ですから、
雰囲気を重視した作品や、内面を描き出すような作品の場合、
イリュージョンテクニックを使わないほうが、良くなってきてしまうんですね。



ところが、お客さんはイリュージョンテクニックこそがマイムだと思われる方が多いですし、
もちろん、私自身も大好きなので、上手く取り込みたい。



そこで、一番大切になってくるのが、技術だと思うんです。
つまり、最初にお話した「どう触るんだ?」なんですね。



例えば、「カベ」というテクニックも、じつは非常に奥が深くてですね、
「カベ」を上手そうに見せるものから、「カベ」を感じさせずに“壁”を表すもの、
様々なやり方があるんです。
(技術そのものを見せるのか?技術を通して見せるのか?ということでもあります。)



これは長年やっていれば自然に身につくというものではなく、
その違いを知って意識的に訓練していく必要があります。


ふつうは「カベ」が上手になりたいと練習していくんですけど、そのままですとお客さんに


「すごい上手だな」って思われてしまうんですね。


私が大事だなと思いますのは、お客さんに壁があることを感じ取ってもらいつつ、
上手だとは思わせずに、作品の世界に没入してもらうことですから、
「カベ」という技術を使っていながら、「カベ」という技術を感じさせない、
そんな技術を身につける必要があるわけです。


そして、それが身体表現としての表現力に繋がるのだと思うんです。


私がいつも言うところの、
「マイムはマイムテクニックを使った無言芝居ではない」
というのは、こういうことがあるからなんですね。


イリュージョンテクニックはマイムの醍醐味ですけれど、演じる際、扱いには細心のご注意を。