オーガニックマイムJIDAI の「身体」「表現」考

オーガニックな身体の使い方、表現についてのいろいろ。時々、甘いもの。

パントマイムとは? ~ステファン氏の言葉から

パントマイムにはいろいろなスタイルがあるわけではないんです。
そう見えるのは、パントマイムに見えるものを取り入れているパフォーマンスが多いんです。
まぁ、このあたりのことは、厳密に分けられるものでもありませんけど・・・


さて、ポーリッシュマイムとはポーランドのマイムということですけれど、
JIDAIが学んできたポーリッシュマイムといいますのは、
今現在のポーリッシュマイムではありません。

以前にも少しだけお話しましたけれど、現在もしポーリッシュマイムというものがあるとしますと、
それはポーランドブロツワフ州立のブロツワフ・マイム・シアターのマイムということになるようなんですね。

こちらはポーランドのマイムの開祖トマシェフスキー氏のマイム・シアターがその前身になるんですけれど、
このトマシェフスキー氏は本当に天才だったようでして、様々なスタイルの舞台芸術を作り上げてきたようなんです。

私の師の師にあたるステファン氏は、トマシェフスキー氏のマイム・シアターのトップアクターとして活躍していたのですが、
ある時からトマシェフスキー氏の方向性がマイムの芸術性から離れ、パフォーマンスの方向へと行ってしまったために、退団・独立をし、
その後ニューヨークでトマシェフスキー氏のマイムの芸術性を発展的に創造していったんです。

そのニューヨーク時代に他のマイムとの違いを言い表すために、
敢えてポーリッシュマイムと謳っていただけで、
特別ポーランドという国のスタイルというようなものではなかったんですね。

で、現在のポーリッシュマイムとでもいうべき、
ブロツワフ・マイム・シアターのマイムは正直全く異なります。

2年前の国際マイム芸術祭でのマイムワークショップのゲスト講師で私と共にいらっしゃっていたマレック氏は、
そこの芸術監督でありトップアクターなんですけれど、
その指導や舞台を拝見して、こんなに違うものかと驚いたことを覚えています。


ところで、もしスタイルという言葉を使うとしますと、
ステファン氏のマイムとブロツワフのマイムとでは異なりますし、
JIDAIもそのどちらとも異なります。
けれど、私のマイムとステファン氏のマイムは同じです。スタイルは違いますけれど、同じ。

それは、パントマイムという点で同じということなんです。
パフォーマンスの道具としてのマイムではなく、
芸術表現としての“身体の在りようを問うマイム”である
ということで同じなんです。

ステファン氏がマイムの話をする際にいつも口にするのが、

state of existence

直訳しますと「存在の状態」です。

これとほぼ同じような感じで

silence of the body 

という言葉でマイムがどういうものかを語ります。


私はstate of existence「身体の在りよう」と捉えています。

表現とは身体の在りよう(すなわち内面)の変化を見せるものであり、
どのような身体で在るか?(どのような内面を持った身体であるか?)
ということだと思うんです。

そういった身体の在り方を実現するためには、まず身体が真っ白でなくてはいけない。
余計なものを無くして、あらゆる色を純粋に現せるようにキャンバスは白くなくてはいけないということです。

それは言い換えますと、いつも申していますが、
マイムは身体に豊かな音(豊かな内面)を内在させるわけですから、
様々な音を純粋に出すには、元の身体に余計な音がしていてはいけないということだと思うんです。
それがsilenceof the bodyということになるでしょうか
私はいまのところ、そう解釈しています。


ステファン氏はスタイルを教えているわけではないと言います。
それは私も同じです。(ステファン氏と同列に語るのはおこがましいのですけれど)
あくまで身体の在りようを学んで欲しいと思っているわけで、
自分の身体の外側に何かを付け加えるようなものではなく、
自分の身体と内面を発見して外に出していくことを求めているんですね。

それこそがパントマイムであり、具体的にどんな形の表現スタイルをとるかは全く別の話なんです。


と、そんな具合でして、私JIDAIがこれまで伝えてきているマイムは
ポーリッシュマイムでもなければ、オーガニックマイムでもなく、
あくまで単にパントマイムであり、それは同時に、
ステファン氏がトマシェフスキー氏から引き継ぎ発展させていったマイムなんです。

ポーリッシュマイムやオーガニックマイムというと本当は語弊があるんです。
スタイルという、動き方や形を伝承しようとしているわけではありませんから。

パントマイムの身体になることが大事なんです。


最後に、

「行動」を見せるはダンス。マイムは「行動を起こす内面」を見せる。


動き方や形を教え習うのであれば、それはダンス。
パントマイムは身体の在りようであり、内面の身体化が命です。