オーガニックマイムJIDAI の「身体」「表現」考

オーガニックな身体の使い方、表現についてのいろいろ。時々、甘いもの。

震災、津波を超えて・・・

芸人さんなんですけど東日本大震災後に芸人としてではなく、
被災地へ何度も足を運んでいろいろなお手伝いをして、
少し被災地が落ち着いてからは芸人として、
やはりあちこちの被災地を訪れている仲間からこんなメールをもらいました。


先日の『海と母と子』に対して・・・
(全文そのまま)


まず、なにより、
現実に起こったことを作品化された、その勇気に大変力づけられました。
作品全体にそこから来る高貴さがありました。
これは、とても大事な事だと思います。
衿持と言いましょうか、そういうものが漲っていることで、
作品の香りが高いものになっていると思います。
しかも地面にしっかりと足がついて浮いていない。
この作品は、特別なものと感じました。
自分中心の弱い主題が多いパフォーマンス、パフォーマンスに限らず世の中で、
一つ次元を上に持っていった作品と感じ、大変感動致しました。
観点、主題をどうとるか、JIDAIさんの考え、思い、覚悟に勇気づけられました。



同時に、主題の表現の仕方が、素晴らしかったです。
抽象に陥りすぎもせず、具体だけでもなく、本当のファンタジーと思いました。
また、身体の技術、しなやかな強さ、強弱、省略の仕方など、
主題を分からなくてそれ単体だけでも、ずっと時間を共有していたいと思う舞台でした。
照明も、良かったです。


以下個別な話しになりますが、
子供がかわいかったーーーーー!!めちゃかわいかったっす!!!!
座敷わらしですか??
子供のなにも悲しくない、生前のいたすらっこのままの姿と老婆との対比に、
トテモやられました!!!
今思い出しても、ちょーーーーー良いです!


台本も、情緒に流されるだけでなく、厳しい無常や現実もあり、それらがたんたんとある事、
でもそうであってほしい、そうであるかも知れない事も自然に入ってきて、
その内容、構成にも、引き込まれました。
素晴らしい、本当のファンタジー作品だと思いました。


まとめますと、今回の舞台には、私は本当に引き込まれ、
頭脳でも、感覚でも、とても感動したのは当然ですが、
それ以上に、表現ということの衿持、誇りをもった、意義深い作品と思いました。
そして、表現技法も素晴らしかったです。


抽象的な色合いは濃いと思いますが、
東北の現地で行うと、多分ほぼ全員が分かるのではないかと思いました。
そして、きっと良いカタルシスになると思いました。
現地の人にこそ、きっと大きく反響があるように思いました。
もしやるとしたら、大変とは思いますが、やはり室内で、少ない灯数でも照明をつかって行えたらいいですね。
私も東北で芝居をしていたので、本当にわずかばかりの力ではありますが、何かご協力出来たら光栄です。


以上です。



実は今回の作品『海と母と子』の後半は、1年前、東日本大震災を受けてアイデアを出し、ほぼ作り上げていたんです。
あれだけ大きな出来事を無視してはいられませんでしたから。


ただ、ほぼ出来上がりはしたものの、


「つまらない!」


そう思ってしまったんですよね。


「これは舞台には上げられない!」


ただ単に震災がベースにあるというだけで、作品としてのエネルギーが弱過ぎるように思ったんです。
それは同時に、被災した方に対する非礼になるとも思ったんです。


結局そのままお蔵入りとなり、日の目を見ぬままになる予定だったんです。



そして今回ですけれど、復活させる予定はなく全く別の構想で作品をつくっていたんです。


それが、ある時ふっと思いつきまして、あの1年前の作品を組み入れることにしたんです。


もちろん、ただポンとはめ込むわけにはいきませんし、私の頭の中には、2つ大事なことがあったんですね。
それは・・・


被災した方がご覧になったら、ということと、
震災とは無関係に例えば10年後に海外の人がご覧になったら、ということ。


いろいろな意味で安易な気持ちでは発表できません。
今回ほど自分の作品にナーバスになったことはありませんでした。



ちょっと意外でしたけれど、
今回、上演後の感想で震災について触れられた方は他にはいらっしゃいませんでした。


けれど、ここで紹介させていただいた感想のように、
もし東北の現地で受け入れていただけるなら、本当にありがたいです。



ただ、『海と母と子』は被災した方を慰めたり励ましたり、
というような作品ではないと思います。
いわゆる応援というのでもありません。


言えますことは、もし私が被災者であったなら、安易に共感して欲しくないということ。
安易に慰めてくれるな、安易に励ましてくれるな、ということ。
私たち被災者をダシに使うなということ。



さて、、、