先日の公演（マイムのプレゼンテーション）では
作品『雪の温もり』『闇』『劫』の一部をご覧いただきました。
一部とはいいましても、どこか完結したように感じられるものだったと思います。
さて・・・
ひとは物語を生きている・・・
物語なく生きることは、極めて困難だと思うんです。
自分がどんな物語の中で生きているのか？
これは、とても重要な意味を持ちます。
この物語は人から与えられるものではなく、
自分で作るものです。
この物語が、あまりに現実（日常）からかけ離れている場合、
いわゆる一般的な日常生活が困難になるでしょう。
もちろん、それは必ずしも悪い意味ばかりではなく、
天才といわれるような人は、一般的な人とはかけ離れた物語の中に生きていて、
だからこそ天才であり、常人には理解し得ないことが多い。
天才がその能力を良い意味で発揮するには、
一般的な物語を生きている常人の世界との橋渡しをしてくれる人が、
間に立つことが必要だったりするわけです。
人間以外の生き物は、物語を生きるということはないのではないかと思います。
他の生き物は本能に従って、生命を長らえる、子孫を残す、種を残すためだけに生きている。
ひとは自分の生きる物語を作れなくなったとき、自ら死を選ぶこともあるでしょう。
ところで、この物語というものは、
言葉で時系列的に語ることのできるものではない
と思うのです。
何かいろいろな要素が同時並列的に重なり合い、
確かな因果関係がないままに、
それでも「私」という自分の中では、
ひとつの確かな物語になっていて、
どれかひとつでも欠けていては成り立たないようなものではないかと思うのです。
ですから、自分がどんな物語を生きているのかは、
実はそれほどはっきりと自覚できるものではなく、
思わぬ物語を生きていたりして、そこに漠然とした不安を感じると、
自分探しや占い、精神世界系に関心を持ったりするのではないでしょうか？
こういったことも、まさに他の生き物では考えられませんよね？
私たち人間特有のことですね。
この手の不安は、
言葉というものが因果関係と無縁ではない
からだと思うのです。
本来、いろいろな要素が同時並列的に重なり合い、
確かな因果関係がないままに成り立っている物語を、
因果関係に縛られやすい言葉で言い表そう、理解しようとすることで、
無理が生じてしまうのではないでしょうか？
いけないというのではなく、極めて難しい
ということです。
”言葉にした途端に、こぼれ落ちるものがある。”
そういうことです。
（この言葉は、私がマイムを語る上で大事な言葉です。）
私のマイム作品の多くは、このような物語を表現しようとしています。
観る人のそれぞれの中にある物語の一部を、
目に見える形で、舞台に表出させているのです。
観る方にとって、ご自分の物語を補完する物語になればと思っているのです。
ですからそれは、
寝ているときに見る夢のようであり、
その潜在意識ともいえる物語は、
言葉で説明できるものではありません。
因果関係から抜け出すことが難しい言葉で
理解しようとするものではないのです。
もちろん、私のマイム作品は好き勝手にいろいろな要素を並べているわけではなく、
必ず（言葉にはできない）物語があります。
それはストーリーではない物語です。
（私はこれを、「物語性」と呼んでいます。）
私はマイムが持つ力の非常に大きなものとして、
このような物語性の表現にあると思っています。
それは、私にとってマイム作品は、
「自由に解釈してもらえればいい」というスタンスではない
ということでもあります。
そういった意味において、私のマイム作品を観て、解釈しようとするのではなく、
何を感じたか？
何が思い起こされたか？
に注意を向けてもらえたらと思うのです。
つまり、
私JIDAIの表現ではなく、
ご自分の表現
として観ていただけたらと思うのです。
ひとは物語を生きている・・・
その物語は言葉にしづらいもの。
言葉にできないほど深い物語。
だからこそ、生きる力になる。
その意味で、マイムが観て下さる方の生きる力になればと思います。
Body,Mind&Spirit 本当の自分の身体は天才だ！
