先生から
「本番は楽しんでやって下さい。」
と、いわれたことありませんか？
アスリートが
「（オリンピックを、試合を）楽しみたいと思います。」
というのは、聞いたことがありますでしょ？
私はこの言い回しに大きな違和感を覚えるんです。
みなさんはどうですか？
特別に大きなプレッシャーのかかる本番でないにしましても、
よく「楽しめばいいんです」といわれますよね。
楽しむって・・・
どういうこと？？？
これ、文字通り、いわゆる楽しいという意味とは別に、
もうひとつの意味があることに、ようやく思いがいたりました！
言葉の使い方って、恐ろしいなぁと、つくづく思います。。。
ということで…
以前にランニングのお話で、このあたりのことに触れたことがありますけど、
ランニング人口は多いものの、ランニングを楽しめている人は、かなり少ないように思うんです。
多くのランナーは、ランニングを楽しんでいるのではない。
何を楽しんでいるか？
ランニングを通して得られる何かを楽しんでいる。
それは、ランニングを通しての仲間との交流といったことやファッションなど、
ランニング前後のことはもちろんですけど、
爽快感かもしれないし、達成感かもしれない。高揚感もあるかもしれません。
けれど、いずれもそれらは全て、ランニングを楽しんでいるのではないんです。
といいますのは、ランニングでなくても、それらは得られるものだからです。
ヨガでも、フィットネス系でも、同じことがいえますし、
私のような表現でも同じことがいえます。
マイム、芝居、ダンス・・・それらを楽しむのではなく、
それらを通して得られるものを、ランニングの例のように、楽しんでいる。
要するに、
そのものズバリに対しては向き合っていない。
良い悪いではありませんよ。
（しかも、分野的には、そういった楽しさこそが、裾野を広げる力ですし。）
けれど、私も含めて、一般的に「楽しむ」といいますと、
この手の楽しさのことをイメージしてしまうのではないかと思うんです。
それと、笑顔でしょうか？
ですから、冒頭の例のような真剣に向き合わなければいけない場面に、
「楽しむ」という言葉が出てきますと、違和感を覚えるのだと思うんです。
真剣に向き合うべき場面で、リラックスして臨むという意味もあるのでしょうけど、
なぜ、あえて「楽しむ」なのか？
そこで、もうひとつの「楽しむ」です。
これは、言い換えれば、
「味わう」
味わうんです。そのものを味わう。
ランニングでしたら、ランニング自体を味わう。
身体にかかる負荷や生み出されるエネルギーの変化、呼吸や鼓動、顔に当たる風、地面の状態・・・
といった、ランニングの最中に起きていることを、ただ見る。常に、逐一見続ける。
（あまり余計な価値判断を加えないほうが、より味わえるでしょう。）
それは、取りも直さず、やるべきことをやるということ。
もし、試合で、表現の場で、前者のような楽しみ方をしてしまいますと、
それは、やるべきことがやれない状態に陥ってしまいます。何しろ、向き合わないのですから。
後者の楽しみ方というのは、
結局、その時には、楽しいなんていうことは感じない。
味わうということは、向き合うということ。
余計なこと、やるべきこと以外のことが入り込む余地がない状態。
話は変わりますが、ある特殊な能力を持つ知人が、
自分の良くない将来を読み取っていたのですが、それを避けることは出来なかったといいます。
そこで、将来を読み取る意味があるのか？という疑問に対して、このように答えていました。
「味わうため」
「予め知っていたからこそ、深く味わえた」
「知らなかったら、翻弄されてしまい、味わえなかっただろう」
将来を読み取れるのかどうか？ということは、一旦置いておきまして、
味わうためには余裕が必要です。
試合で、表現の場などの真剣に向き合うべき場で、余裕をなくしてしまわないよう、味わう。
そして、
味わえれば、
結果、楽しかったということになる。
試合直後のインタビューでの有名な言葉
「すごく楽しい４２キロでした。」
これは、自分の走り、勝負の駆け引き、応援、空気感など、
その時起きているあらゆることを味わえたからこその言葉ではないでしょうか？
楽しむという言葉に、どういった意味を持たせるか？
２月１４日 『原始歩き同好会』
Body,Mind&Spirit
本当の自分の身体は天才だ！
