オーガニックマイムJIDAI の「身体」「表現」考

オーガニックな身体の使い方、表現についてのいろいろ。時々、甘いもの。

その技術には、どんな視点がありますか?

どんな技術を身につけるかはもちろん、大事だと思うんですけど、

その技術習得に当たって、どんな視点を身につけるか?

ということが、極めて重要なのではないかと思うんですね。





どんな技術でも、その技術が生まれた理由があると思うんです。




まぁ、身体表現で単に特殊な技術を目指した結果として
生まれたに過ぎないものもあるでしょうけれど、それもやはり、
特殊性ということで、人の目を引くため、驚かせるためという理由がありますよね。





今回のお話の核は、そんな驚かせるための技術のことではないのですけど、
それでも同じことでして、その技術が持っている視点を身につけられなければ、
本当の意味での技術習得には至らない。


そんなお話。





と、本題に入る前に、先だってSNSに挙げたたこんな言葉。



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「習う」と「師事する」・・・


「習う」は、単に技術的なこと。


「師事する」は、精神的なことまで含めて、習うこと。



そして、他人に対して「私は◯◯先生に師事しています。」と言う際は、
自分の力量が、先生に恥をかかせない程度かどうか?
に思いを馳せたほうがいいように思っています。

私自身の場合、マイムはテリー・プレス氏に師事しました。それは問題無い。
問題は、日本舞踊!


マイムの人間としては、「日本舞踊を藤間玉左保氏に師事した」
と言えるのですが、

日本舞踊の場では、とても言えない。。。やはり
「日本舞踊を藤間玉左保氏に習った」
であろう。


もちろん、そんなに下手ではないんですよ(笑)
なんだかんだと、17年くらいはやってましたから。


ただ、舞踊家ではない。
ですから、師事したというのは、失礼に当たると思っているんです。



「習う」と「師事する」は、分けて考えたいのです。



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長くなりましたけれど、



「師事する」は、精神的なことまで含めて・・・




この精神的なことというのが、


技術が持っている視点だと思うんです。




精神的なことといいますと、師匠の人柄、人格、

そういったものを指すような感じがしますけれど、それはそれとして、
何より重要なのは、その技術が持っている視点。




私たちのマイム(アートマイム、オーガニックマイム)に関して言いますと、

身体的に技術が難しいということよりも、
視点を理解できるようになるまでが難しいために、
身体的な技術が身についてこないということが、ままあります。

(どんな視点かといいますと、ここでいつも記事で挙げているようなことですね。)





技術から視点が抜け墜ちてしまっていますと、


それは、画竜点睛を欠く、死んだ技術。





例えば、私のレッスンではユニークな動きが多く登場するんですけど、

それは、たまたまユニークということであって、
すべてはこのマイムの本質的な力を高めるためのものに過ぎないんですね。



けれど、そのユニークさに目を取られてしまいますと、

どれだけ多くのことが出来るようになっても、
それは全くもって、私の伝えているマイムにはならない。




逆に、そういった表面的なところに目を奪われずにいられますと、

技術が持っている視点を、しっかりと掴むことが出来ます。




私は、マイムに限らず、

何か技術を身につけようとする際に、
この視点を身につけられることこそが、その技術に出会った意味
だと思うんです。




例えば「ヨガ」。

同じヨガという名前の元で、多くの方が学ばれていると思いますけれど、
視点を学んでいるかどうかで、全く違うものになってしまいますよね?



指導者も、どんな視点を学んできて、伝えようとしているかどうかが、重要ですよね。

持っている視点が弱ければ、成長してきた生徒さんは離れていくでしょう。



つまるところ、


その視点が強大であればるほど、

その人の人生に大きな影響を与え、

一生追求していく価値のある技術になる。






そんな技術に出会えるかどうか?



そんな視点に出会えるかどうか?



どうしたら、そんな技術や視点に出会えるのか?



それこそ、その人のセンス。





私のところに通っている女性、彼女は体を動かすことはしてきていないにもかかわらず、

長年フリーのライターとして多分野に亘って活躍していることもあるのでしょうけど、
大事なものを掴む能力に非常に長けています。

本質を見抜く力が図抜けているんです。



そんな彼女の(SNS上で挙げていた)言葉は、多くのことを教えてくれます。



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身体を使って無いものをあるように見せたり、

身体をとりまく空間を演劇的な質感に変えることがマイムの表現技法だ。

ある程度はテクニックで補える面もあるが、

それだけでは面白いと思えるところまではたどり着けないようだ、
ということはマイムを初めてまだ数年の私にも最近分かるようになってきた。



マイムの面白さは、

自分の周りのなにもない空間が自分と溶け合うように感じる瞬間にあると思う。


私は舞台に立ったことはないので、

「自分と周りの空間が溶け合う」というふうにしか思えないが、
舞台で演じる人はもしかすると空間のみならず
観客を含む劇空間全体と溶け合うように感じるのかもしれない。




溶け合う、と書いたがこれは曖昧なうえ、正しくない。


溶けるというと輪郭がなくなるように感じるが、そうではなく、

空間は歴然としてそこにあるし、自分と世界の境界線が崩壊するわけでもない。
(皮膚の感覚は若干変質することがあるが)。



実感としての言葉で説明すると、マイムがうまくいくと、皮膚周囲の空間の粘りが変わる。


手のひらで空間をこねるとどろっとしてくる。

なにもないところで、弾力のあるゼリーのような豆腐のようなものを
体感として踏むこともできる。

マイムに熱中していると「ある/ない」という感覚が崩れ、
多くの場合錯覚として済まされる現象が、身体を通して現実味を帯びる、
と言えるかもしれない。



空間が粘ってくると、次は空間からの積極的な作用すら感じるようになる。

たとえば、手ごたえのある壁を押す動きをしていると、その壁からの反発を感じる。



これがうまくいくと身体の受容力が増して、

能動的に動かなくても受動的に、空間への反応として動けるようになる。
その時、私は押すし、押されている。

そしてそのうち、私は失くなり、「押す」「押される」という現象だけが残る。



これは空間と身体が相互に依存し、作用しあっているということだと思う。



おそらく身体と空間のこういった関係は、

マイムのみならず、武術やその他の身体技法、身体表現にも見られるだろうし、
もっといえば呪術や妖術の世界にもあるのではないだろうか。



もしかしたら、こういった感覚は憑依と表現されるものに近い可能性も

あるのではないかと思う。



身体を通した空間との統合と、空間に向かった繊細な解放を理解するには、

どうしても身体で経験するしかない。




私は期せずしてアートマイムを通してこの圧倒的な感覚を知ることができた。

それはとても幸いだった。
知ると知らないでは世界観が違っていたはずだ。



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引用が長くなりましたけれど、

アートマイム、オーガニックマイムはこの世界の在りようを、
(それを意味付けするための)物語の世界から外れた上で、
もう一度、物語の世界に戻ってくるためのものですから、
その一端に触れられた彼女は、この春から、さらに大きく羽ばたこうと、
新たな道を歩み始めます。





マイムに限らず、


学んでいる技術を直接何かに使うことがなくとも、

こうした視点を持てたら、幸せなのではないかと思います。






          4月15日
       

       『マイミクロスコープ 


    〜夜のアートマイム劇場 第十一夜〜』


                 https://www.facebook.com/events/1081872061875274/




   



     3月29日 『足の丹田〜身体の使い方の土台の土台〜』

                 https://www.facebook.com/events/990824027632150/





 3月30日 『ストレス・緊張を抜き去る〜頭・アゴ・首をゆるめる〜

                 https://www.facebook.com/events/239652649709789/






   4月10日 『声(音)を身体に響かせる〜自分の内を外へ広げる

                 https://www.facebook.com/events/1767763896840321/





           4月14日 『動作塾 特別講座

        (刀の扱いから、身体の使い方とエネルギーの伝わり方を学ぶ)

                 https://www.facebook.com/events/533136723531236/





        4月17日 『動作塾(4月のテーマ「走り」)

                 https://www.facebook.com/events/548431921991679/





            4月17日 『原始歩き同好会