何か達成したいことがあるとき、
よく聞くと思うんですけど
「すでに達成した自分をイメージしましょう」
これの是非はともかく、身体的なことでいいますと、
上達したいことがあったとき、
まず先に出来ている状態を体験したほうが、絶対にいい！
もっと速く走れるようになりたい。
もっとキレのある動きをしたい。
もっと楽に動けるように、もっと軽やかになりたい。
もっときれいな動きをしたい。
いろいろありますよね？
で、こういったことを実現しようと頑張るわけですけれど、
一般的な練習というのは、積み上げ式ですね。
これは、未知の感覚を目指しての練習。
当たり前ですよね？
出来ていないから練習するんですものね。
そうしますと、自ずと、とにかく量をやり込んで、その先に、
これは？！という感覚を手に入れる、そんなやり方になります。
しかも、出来るようになるかどうか、
不安や疑問を感じながら・・・
けれど、目指すべき感覚を知っていたらどうでしょう？
それも、自分の力や意識のもとで、体感出来ていたら？
未知の感覚を目指すという、どこか無理のある練習ではなくなります。
すでに自分の身体で経験したことのある感覚です。
出来た時の感覚を知っているというのは、
とても大きな力です。
（上手な人と練習するのが良いのは、ミラーニューロンの働きで
上手な人の感覚が多少なりとも写し取れるからですから、
大枠では同じことですね。）
身体の記憶に残っているので、
上手く引き出せばいいわけです。
例えば、私のランニングのレッスンは、
このいい感覚を体感、ご自身で作り出せるように導いていきます。
バレーボールを専門とするアスリートの方の
ランニングレッスン受講の声をお聞きいただくと分かると思います。
「どんどん前に体が進んでいく。そんな感覚がありました。
普段、走りの練習をする時には、このような感覚をうまく感じることはできませんが、
昨日は良い走りの感覚を「すっ」と体感することができ、また、その感覚が何回も再現できる。
とても気持ち良く走ることができました。」
これは、筋力アップや柔軟性アップによってもたらされたものではなく、
身体の使い方の変化です。
つまり、これまでとは違う神経回路が使われたということになります。
この、新しい神経回路が開かれたというのが、
身体の記憶になるのです。
もちろん、開かれたというだけで、まだ脆弱ですから、
本当の意味で、身につけるには、この質を伴った量をこなすことが重要になります。
これまでのランニングで使われていた神経回路との書き換え作業です。
これはある意味、地味な作業ではありますけれど、
いずれにしましても、良い神経回路が開かれていることが、ポイントです。
何が良いのかも分からず、未知の神経回路を探り出すのは、
至難のわざです。
と、こう考えますと、
ドーピングというのは、倫理的には問題があるにしましても
良い感覚を味わうという点では、大きな意味を持つだろうと思います。
身体に記憶が残りますから、
ただ一度のドーピングであっても、
自分のトップパフォーマンスを一時的にでも上げられれば、
その後、実現できるパフォーマンスは、
ドーピング経験無しでのときと比べて、
格段に上がりやすくなると考えられます。
まぁ、一般に人にはドーピングは関係のないお話ですけれど、
何度もいいますように、
先に、いい感覚を味わってしまい、
その後、神経回路の書き換えのために量をこなす。
できるだけ、積み上げ式の練習をしないで済むように。
ちなみに、私のレッスンは感情表現のレッスンでも
その他のあらゆる身体的レッスン、発声でも重心でも、パンチでもなんでもが、
基本同じ考えです。
そして、私は生徒さんの身体に触れるなどの補助を、
出来るだけしないようにしているので、
レッスン中に味わった良い感覚は、本人が自分で生み出せたものになります。
自立という意味でも、これは重要だと思っています。
良い感覚は、さらに良い感覚を引き出す、呼び水になります。
練習方法、見直すきっかけにしていただけたらと思います。
