「技術じゃないんだ」
いろいろな場面で、よく聞かれます。
どうですか？
そして、この言葉を聞いて
どう思われますか？
何か、高尚な感じを受けるのは
私だけでしょか？
技術を超えたところに、
本当に大切なものがある。
一見、もっともらしい。
だからこそなんでしょうけど、
指導者がこの言葉を発することに、
大きな違和感を覚えるんですよね。
いえ、何も、
指導者は技術だけ教えていればいい、
とうことではありませんよ。
「技術」とは何か？
「技術ではない」とは何か？
ここが曖昧であるがために、
教わる側は、
理不尽な努力を要求されているのではないか？
ということなんです。
ちなみに、私の指導は
身体の使い方だけでなく
内面表現でも、
技術を身につけてもらうようにしています。
さあ、技術とはなんでしょう？
多くの方が、イメージされるのは
マニュアルのようなもの
ではないでしょうか？
そうであるなら、
技術＝マニュアルであるなら、
もちろん、私も指導したりしません。
マニュアルには
その人の個人性が入り込む余地が
全くありません。
機械、マシーンを作る方法ですものね。
では、「技術じゃないんだ」というのは
どういう意味だと捉えられていますか？
多くの方が、
心
心や精神のあり方こそが、
重要なんだと思われるのではないでしょうか？
「機械のような、心を持たないものになるのではなく、
心を持った人間になれ！」
「技術じゃないんだ」には、
そんな響きがあります。
けれど（…ここからが重要！）
心や精神のあり方は、どうやって分かるのでしょう？
扉の向こうにいる、姿の見えない人の
心や精神のあり方が分かるのでしょうか？
この一見、高尚にみえる
心や精神のあり方も、
「行動」
という目に見える形にならなければ、
崇高だろうと下卑ていようと
分かりません。
（じっとしていても、姿や顔つき、目の雰囲気など
目に見えるものが重要）
この「行動」の質を支えるのが
技術です。
行動自体を技術と考えてしまいますと、
誤ります。
それではマニュアルになってしまいます。
行動の “質” を支える。
ですから、
当然、行動するその人の個人性が
からんできます。
無視はできませんよね。
とはいえ、質を悪くするような個人性があれば
正す必要があります。
たとえ、
自分では良いと思っている心のあり方であっても、
邪魔になるだけです。
行動の質の良し悪しを判断するのは、
自分ではなく、他者、受け手ですから。
技術とは、行動の質を支えるもの。
そして、もう一つのポイント。
行動の質を支えるためには、
偶然頼りでは困りますよね？
ということは、
再現性の高さが重要になります。
保育士の方が子どもに
「優しい口調で話す」として、
偶然頼りだったら、どうでしょう？
「気持ちはあるのに…」といくら思っても
意味がありませんでしょ？
訓練の必要があるということです。
もちろん、機械にはならぬように。
心が無い、優し “そう” な口調では意味がありません。
難しい？
…もちろんです。
ちなみに、
私がレッスンで取り入れている
『エモーショナル・ボディワーク』とは
機械にならぬように
心のあり方を生み出し
その心と行動（身体）の一体化を図る訓練法になります。
舞台では、表現力といわれるものです。
嘘がない表現。
自分の “真” が現れる表現。
それを、
個人のカン、感性任せ、偶然頼りではなく、
技術力として高めてもらっているんです。
技術について、私はこのように考えています。
技術とは
高い再現性を持った、行動の質を支えるもの。
「技術じゃないんだ」によって
技術を否定して、路頭に迷わないことを
祈っています。
