手にしまても足にしまても、小指の重要性が取り上げられることは多いですけど、
お聞きになったことはありますか?
ゴルフや剣道では、当たり前のように小指で握れと言われます。
足も小指が機能していませんと、地面を掴む力が弱くなり安定しなくなります。
そう、小指は「掴む」ために重要な指!ということなんです。
ですから、安定という点では、小指は非常に大切なんですけれど、これ、動くということを考えた時には、ちょっと無理が出てくるんです。
動くといいますのは、不安定であることが大切。
もちろん、ただ不安定ですと、それは転倒になってしまいます。そうではなく、不安定な状態を安定的に続けるというのが、動きとしては良いわけです。
ちょっと歩きについて見てみましょう。
前足に乗り込むように歩けますと、(極端な言い方をしますと)前方に倒れ続けるよう動きになっているということで、スピードも上げやすい。良い走りになっていきます。動きが連続しやすいということでもあります。
一方、前足には乗り込まずに、後ろ足に体重を乗せた状態から前足に乗せ替えるように歩きますと、安定はしていますけれど、動きとしては効率が悪い。お年寄りの歩き方ですね。
といったように、動くということを考えた場合、安定だけでは足りないんです。
ところが、日本人は安定好きなんですね。
悪いことではないのですけど(私も安定は好きです)、それがために、動きのある動きが苦手なんです。
ですから、体幹はさして動かずに、手や足だけを動かすことになります。
安定したまま、動こうとするわけです。
日本人の動きがバタバタして見えることが多いのは、そういった理由からです。
もちろん、これを高度に乗り越えた動きが、武術的な動きになるわけですけど、今の日本は、多くのスポーツやダンス、そして服装から生活様式まで、ほぼ西洋スタイルですから、かなり無理があるんです。
小指意識の身体で、西洋的な動きのある動きをしようとしますと、上手くいかないか、あるいは怪我をしやすくなると考えます。良い方向に働くとしますと、西洋人にはない独特な動きが評価されるといったところでしょうか?
いずれにしましても、小指を重視するという価値観は、とても気持ちいいんです。元々、何かにしがみつきたい身体性を持っているからです。安定して手放さないというのは、ある意味、得意なんです。
安定が好きで身体性として得意。身体性として得意だから安定好きになっているとも言えます。
さて、動きのある動きのためには、(厳密には異なりますが)人差し指がポイントになります。
(『筋肉力を超えた張力で動く』を参照下さい。)
ただし、小指に意識が向きやすい身体のまま、人差し指をどうにかしましても、上手くはいきません。さすがに、そんなに簡単なものではないのです。
少しお話逸れますけれど、バレエなどでダメとされる鎌足は、小指意識の身体がもたらすのだと考えられれます。
小指によって安定度が増しますと、気持ちも落ち着きます。
一方、動くということを考えた場合には、その安定が足枷になることがあります。
小指の功罪。