オーガニックマイムJIDAI の「身体」「表現」考

オーガニックな身体の使い方、表現についてのいろいろ。時々、甘いもの。

技術の上達・・・「全体を抜きにした部分に、意味は無い。」

スポーツでもダンスでも、それ特有の技術(ダンスであれば振り付けも含まれますでしょうね)を学ぶ必要がありますけれど、
その特有の技術を身に付けることだけが練習というわけではありません。


それを身に付けるための訓練が必要だと思うんです。


といって、筋トレやストレッチということではありませんから、
インナーマッスルでもアウターマッスルでもありませんし、体幹を鍛える
というのでもありません。


例えば、背筋を鍛えるための、うつ伏せの姿勢から上体を持ち上げるという動作、
これは実際の場で何になるのでしょうか?
実際の場では、基本的に足が床に触れた状態で何かをするわけですから、
足を通した床面への体重のかかり方や、その床から返ってくる力など全身の関係性が重要なんです。
寝そべって状態での背筋が、単体で強いかどうかではないんです。



それに、人間は横になった状態で出来ているものが、縦になって出来るか?
というと、そんなことはないですし、
立ち止まった状態で出来ていても、歩きながらだと出来なくなるということは、
よくあります。



いえ、もちろん、いわゆるトレーニングが必要無いということではありませんけれど、
決定的に欠けているものがあるんです。



スポーツでもダンスでも、日常生活でも、全ては


歩きながら何かをするんです。
体重を移動させながら何かをするんです。



これはとても大事なことなのですが、
ラグビーや相撲のように相手を押すものは、当然、自分の体重を前方に移動させていきます。
これは歩くということと同じですよね。


一見歩くということとは関係無さそうな、例えば、ボールを投げる、打つということも、
必ずどちらかの足から、もう一方への足へと体重が移動していきます。
歩くということと、基本的に同じですよね。


仮に、体重を移動させない方法で行っているとしましても、
一本足のままでということはありませんよね?


蹴るという行為も、足を振り上げることではなく、いかに蹴り足に体重を載せていくか?です。


ダンスも同じ。(もちろん、私が15年ほどやっている日本舞踊も)



何かをするためには、必ず2本の足での体重の受け渡しが必要なんです。
あらゆるものが、歩きながら(体重を移動させながら)何かをするという行為なんです。



ということは、その「何か」に当たるもの(その種目特有の技術と置き換えていいかと思います)が、
歩き(体重移動)と同調していなければ、その「何か」は全体として上手くいかない
ということだと思いませんか?



ところが皆さん、歩きの練習はしないんですよね。。。



いわゆるトレーニングといいますのは、大抵の場合、止まった状態、床に寝た状態で行います。
移動を伴うトレーニングとなりましても、それは瞬発力、筋持久力あるいは心肺機能を鍛えるためとなってしまいますから、それは「何か」という技術には結びつきません。


技術というのは「○○力」で表せるものではありません。
技術がつくことでパワーが生まれることはありますけれど、
「○○力がついたから技術が上がった」ということはないんです。



今のトレーニングは非常に科学的です。
それは悪い意味で科学的です。


あまりに部分的過ぎると思うんです。
部分を集めたら、全体になると思っている。


言葉では全身をバランス良く鍛えましょうとは言うものの、では、その全身のバランスって何ですか?
ということなんです。


ちょっと話は逸れますけれど、


「言葉というものは、全体を抜きにした部分に、意味は無い。」


というのが、現代言語学の考え方だそうです。
失語症の考察からも、同じ結論を得ているようですが、身体も同じだと思います。



体重移動の技術つまり「歩きの技術」といいますのは全身の技術です。


その歩きの技術と具体的な「何か」の技術が一体化していくことが、技術が上がるということだと思います。


そして、その歩きと「何か」の一体化というのは、その2つが同時に上手く出来るといったような意味ではなく、「何か」の技術が歩きの延長線上にあるということです。



例えばそれは、投げ終えた後、打ち終えた後、蹴り終えた後、
居着くこと無く、流れてしまうのでもなく、
一歩目がスムーズに出るということになるわけです。


ダンスであれば、重さがあるのに軽いといったことにもなってくるでしょう。



これは簡単にはいかないかもしれませんけれど、
ここを目指さず、目の前の結果を追った部分的なトレーニングをしていくことは、
ケガの可能性も含め、お奨めはできません。



スポーツでもダンスでも、その分野特有の非日常的な動きと、いわゆる一般的なトレーニングの間を埋める訓練が必要だと思います。



それはどんな訓練か?


「歩きを全身の技術として習得すること」


そう言っても、過言ではないと思います。