ドローインは西洋の身体の発想。
和の身体には弊害が。
ドローインという言葉、聞いたことあるかと思います。
簡単に言いますと、腹横筋で「下腹を凹ませる」こと。
さて、今回はバレエなどで重要視される「引き上げ」と関連させてのお話です。
引き上げとドローインは密接なつながりがあります。
詳細は一旦おいておくとしまして、
引き上げ≒ドローイン
として、お話を進めていきますね。
『和の身体と西洋の身体』シリーズで言及しましたように、
西洋の身体では、(脚で地面を)踏むと引き上げが起こり、
膝が伸び、ルルベ(つま先立ち)になる。
和の身体では、踏むと膝が曲がる。
西洋の身体はエネルギーが上へ、
和の身体では下へ、
ということなのですが、
ドローインは、
踏む力がどのように作用するか?
と、密接な関係があるのだと実感として分かってきました。
踏む力の重要性ですけれど、
地球の重力を使わずには、私たち地球上の生き物は、
その力を存分に発揮できないということでして、
月の上で、強いパンチを打つのは難しいですよね。
走るのも、ままなりません。
だれかに押すのも、それをこらえるのも、
重力があってこそ。
つまり、
踏む力というのは、
重力を活かす力なんです。
ですから、身体の運動機能に十全に働いてもらうには、
踏む力は極めて重要。
(踏ん張るとは異なります)
その踏む力の作用が、
西洋の身体と和の身体とでは異なる。
(それが、フォーク・ナイフの文化になったり、
箸・茶碗の文化になっていくのだと思います。)
さて、踏む力の作用と引き上げ(≒ドローイン)との関係ですが、
西洋の身体では、踏むと自然に引き上げ(≒ドローイン)が起こり、
和の身体では、逆に下腹(丹田)が充実するんですね。
膝が伸びるか曲がるかにも直結しています。
つまり、西洋の身体の場合、力を発揮(エネルギーを通す)するには、
引き上げ(≒ドローイン)が必要になる。
引き上げ(≒ドローイン)の感覚が生じるのです。
ですから、西洋の身体の場合は
引き上げ(≒ドローイン)は理に適っている。
しかしながら、ここが問題なのです!
もし和の身体の人間が、
引き上げ(≒ドローイン)をするとどうなるか?
当然、踏む力は弱くなります。
身体は混乱します。
本来、和の身体では、踏むと下腹(丹田)が充実して、膝が曲がる身体ですから。
ここで、ひとつこんなお話。
和服は腰が入っていてこそ、美しい姿になると思うのですが、
この「腰が入る」「腰を入れる」というのが、
西洋人や現代日本人に難しいのは、
踏む力の機能の仕方の違いだと考えられます。
踏む力が下腹(丹田)が充実させ、
それがイコール「腰が入る」という状態なのですが、
踏む力が引き上げを起こす西洋の身体であったり、
現代日本人のどっちつかずの身体で、うまく踏めないことで、
腰を入れることができず、
膝を曲げることと混同してしまうのでしょう。
私が長年、感じていた
西洋式ボディワークの有効性を認めつつも、
丸ごと全てを疑いなく受け入れることへの
違和感。
ボディワークをボディワークのためだけに行なっていると
気づきづらいことだと思います。
アスリート自身、アスリートの身体を診るトレーナー・整体師の方で、
ドローインを否定する話は聞くことがあります。
ようやく、体と頭、両方で分かってきた感じです。
これは、いくらか指導すれば、だれでも体で感じることのできるものです。
ドローインは西洋の身体の発想。
和の身体には弊害が。
ドローインをしたからといって、
西洋の身体になるわけではありません。
最後に、ちなみにですが、
この西洋の身体と和の身体というのは、
白黒はっきり区別できるものではなく、
ひとりの人間の中に、どちらの要素もあって、
どちらが色濃いか?です。