筋肉は狙った大きさの力を発揮するよりも、
弛めるときのほうが、よりたくさんの脳部位が働くことが分かっているそうです。
脳にとっては、筋肉を収縮させるよりも弛めるほうが、大変な作業だと。
(『ピアニストの脳を科学する』より)
また、当たり前ですけど、
感覚のないところを動かすことは出来ない。
随意筋といわれる、自らの意思で動かせる筋肉ですが、
なかなか思うようにはいきませんね。
しかも、意思で動かすとはいえ、
実際に動いている場面(歩いていても、運動でも、演奏でも)では
意識的に筋肉自体に指令を送るのではなく、
大袈裟にいえば、ほぼ全ての筋肉が自動的に働いてくれています。
これは、
脳内でそのような運動神経が組まれているからですね。
ちなみに、
身体(筋肉)の部位と脳で組まれている神経のつながりは
一対一の対応とは限らず、また脳にかかる負荷も同じではなく、
馴れた動きは、軽い負荷で済むようになり、
複雑な動きも、馴れてくるとひとつの神経でいくつもの機能を果たして対応するようですね。
だからこそ、つい、これまでよく使ってきた筋肉が働いてしまうわけです。
脳は、少しでも楽をしたがるんですね。
(脳のエネルギー消費量はとても大きくて、
基礎代謝の約20%!に相当するんですよ。)
脱力は難しい。
これまで使ってこなかった筋肉を働かせるのも難しい。
ほぼ、自動的に働いてしまう脳からの指令。
身体・動きのバランスを取り戻すために
どうしたら、力を上手く抜けるようになるのか?
どうしたら、必要な筋肉に働いてもらえるようになるのか?
よく、「○○筋を意識して」といわれると思うのですけど、
最初にも述べましたように、
感覚のないところを動かすことは出来ません。
イメージはすれど、本当に働いているの???
ですね。
「力を抜いて」も、そもそも脳への負担がより大きいのですから…
そこで、私がよくとる方法をご紹介します。
そんな大袈裟なものではありませんけれど、
意外に盲点だったりします。
それは
制限を加えるんです。
一部を動けないようにすることで、
これまでは動かないで済むように逃がしていた部分を
否応無しに働かざるを得ない状態にするんです。
一見すると同じ運動(例えば、腕を上げるなど)であっても、
働く筋肉は人それぞれなんですね。
当人にとっては、(無意識ではありますが)当たり前の動かし方
つまりどの筋肉がどのタイミングでどの程度働き、休むかかというのは、
別の人は、当然違うわけです。
それが癖というものなんですけど、
一部を動けないようにすることで、
休止状態だった筋肉が目覚め、働き過ぎの筋肉が抑えられるのです。
これは、リハビリでも取り入れられている考え方です。
こうして、脳の神経を組み替えていくわけですね。
どこに制限を加えて、どういった動きをするのかは、
知識と経験、それらに基づいた直感・センスです。
とはいえ、まずはご自分でひとつでも試されてみてはいかがでしょう?
関心が高まりましたら、お近くでそういったレッスンをして下さる方を探して見て下さい。
私のほうは、主に金曜の夜のクラスで取り入れていますが、
個人レッスンでも、火曜の日中の「田園調布長田整形外科」内でのレッスンもあります。
どうぞ、身体・動きのバランスを取り戻して下さい。