今朝、何を飲みましたか？
コーヒーですか？それとも、野菜ジュース？
何も口にしない方も、布団からは出てきましたよね？
一体、何の話？？？と思われたかもしれませんが、
私たちは日常でいろいろな動作をしていますでしょ？
何かを飲むということ自体もそうですし、そのためにカップを用意したり、冷蔵庫を開けたり。
布団から出て起き上がり、着替えて、顔を洗って・・・
こんな動作で、一番最初に動くものって、何だと思います？
・・・という、お話を今回はしたいと思います。
私たちのマイム（アートマイム、オーガニックマイム）は、
身体表現として動作を見せること以上に大事にしているものがありまして、
それがこの”一番最初に動くもの”を見せることなんですね。
一般的なパントマイムはもちろんのこと、他の演劇的表現でも、
ここを”意識的に”行なっているものは、
ないのではないかと思うものですから、
ちょっとお話を聞いていただければと思います。
さて、何が一番最初に動くと思われますか？
朝起きてからの行動を思い出してみて下さい。
よほどのことでもありませんと、ほぼ自動的に動いているでしょうから、思い出すのは大変ですよね？
ということで、例えば、道に迷って右に行こうか左に行こうかとなって、右に行ったとして、
何が一番最初に動きましたか？
いい加減、じらさないで話を進めろ！ですね（笑）
すでにお分かりの方もいらっしゃると思いますが、答えは
気持ち
です。
布団を出ようと思ったから、出て、カップを手にしようと思ったから、手を伸ばし、
右に行こうと思ったから、右に行った。
当たり前のようですけど、意外に当たり前でもない。
私たちが動くときって、他人にぶつかられたというようなことでなければ、
自分の意思で動きますよね？
朝起きてからの行動のように、どれだけ自動的になっているようなものでも、
意思のないところに動きは生じませんでしょ？
その意思に気がつかないだけ。
私たちのマイムは、
この意思・気持ちの動きが、
実際の身体の動きに先だって起きていることへの自覚
を、非常に重視しているんです。
どうしてかといいますと、それは、
このマイムが踊りではなく、言葉を使わない演劇的表現だから。
パントマイムでよくいわれる
「見えないものを見せる」
には、
こういうことも、含まれるんです。
で、こんなお話をなぜしたのかといいますと、
いわゆるお芝居でも何でも、このことを知っておきますと、
演技・表現の質が変わってくるのではないかと思ったからです。
お芝居はもちろん、踊りでも芝居っぽい演劇的な表現をする部分ってありますでしょ？
私がそういった舞台を観ていて、残念だなと思うのは、
セリフや動きは見えても、
それを口にする、あるいはそう動くための気持の変化が見えてこないことで、
そのセリフも動きも、宙に浮いてしまって、
こちらの気持ちに届いてこないことなんです。
セリフや動きに気持がこもっているかどうかではないんですね。
むしろ、こめていればいるほど、宙に浮いてしまう感が強まるんですね。
それは、それだけの強い気持ちがこもった言葉や動きが発せられるには、
それだけ大きな気持の動きが、起きているはず。
にもかかわらず、その気持の動きが見えてきませんと、
違和感が強くなってしまうんです。
簡単にいいますと、
間（ま）
に違和感を覚えてしまう。
間というのは、時間やカウントでは計れない（決められない）ものですから、難しいわけですけど、
それを、今回のお話の”一番最初に動くもの”に自覚的になることで、
かなり難しさが減るのではないかと思うんです。
どうですか？
ちなみに、私たちのマイムでは、単に自覚するということではなく、
呼吸法のようなもので身体感覚に変化を起こさせるようにします。
今回のお話がお役に立てれば、幸いです。
１１月３０日 『マイミクロスコープ 〜夜のアートマイム劇場〜』
新作 「羽」
